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環境の温度もまた微生物の生育と活動にとって重要な要素である。土中の集団の物質代謝は生育が最大化される最適値まで上昇した温度と共に加速する。土中環境に存在するバクテリアのほとんどは20℃から40℃の温度範囲の間で最も効率的に活動する。地表から100メートル以内の土中温度は、通常地表の年間平均温度の2℃以内であるため、これは多くの自然環境の範囲である(Chapelle、1992年)。従って温度に関しては、たとえ10℃の低温でも固有の土中の微生物によるメタノールのバイオ分解に対する重要な問題とはならないとみられる。

3.1.2.1.5 様々な酸化還元状況のもとでのメタノールのバイオ分解の報告

メタノールやエタノールのような単純なアルコールは、ベンゼンのようなガソリン成分よりはるかに早い速度で好気および嫌気の両方の環境の中で分解される(表3-2参照)。研究室で得られた分解速度と野外で得られた分解速度の間の違いを表3-2の中で注目することが重要である。研究室で得られた速度は、上昇した研究室の温度と研究室の生育媒体の中でのより過密な微生物の数の相乗効果で、野外で得られた速度よりしばしば高いものとなる(はるかに、あるいはもっと)。たとえば、報告されたすべてのベンゼンの速度は研究室で得られたものであり、このように野外で得られたであろう速度より、さらに速い分解速度を表わす傾向があることに注目されたい。

アルコールの大きな濃度 (>100,000ppm)だけが一般的にほとんどの微生物にとって毒性があるとみなされ、このためバイオ分解が不可能である(Brusseau、1993年;Huntその他、1997年a,b)。メタノールの高い濃度は純粋メタノールの漏出の近くで発生し、発生源の近くでの微生物の活動を制限するかも知れない;しかしながら、これらの濃度は時間と共に、および発生源から距離が開くことによりより希釈化するであろう(KatsumataおよびKastenburg、1996年)。

メタノールのバイオ分解が野外および研究室における両方の研究で測定された。カナダのCFB Bordenの現場における大規模な野外研究において、M85燃料の消滅と持続が好気性の浅い砂の帯水層の中で調査された(Barkerその他、1990年)。帯水層の中に送り込まれたメタノールの平均濃度は7030ppmであった。実験の476日までにメタノールの約99%が分解された(実効第1順位分解速度に関して表3-2参照)。すべてのメタノールを除去するためにはプルームの中の酸素は不十分であった;このため、研究者はメタノールはまず好気性で分解され、その後嫌気性で分解されたと結論づけた(Hubbardその他、1994年)。

 

 

 

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