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米国において現在、嫌気性の脱窒素により水から硝酸塩(NO3)を除去するための炭素原料として、メタノールを使用している下水処理プラントが100以上ある。メタノールの嫌気性バイオ分解の他の方法が大規模に研究され、メタノールで生育できる、少なくとも11種類の好メタン・バクテリアが確認されている(BrockおよびMadigan、1991年)。

嫌気性物質代謝の他の種類には好酸性(アセテートやブチラートを生成)(Florencioその他、1995年)および好硫化物性(HeijthuijsenおよびHansen、1990年)が含まれる。メタノールを酸化するための硫酸塩還元バクテリアの能力は初期の研究では滅多に報告されなかった(Esnaultその他、1988年;WardおよびWinfrey、1985年)。しかしながら、ここ数年の間に硫酸塩還元バクテリアが沈澱物、特に海洋環境における沈澱物の中のメタノールの嫌気性分解に関与していることを示す証拠が蓄積された。好硫化物性のメタノール利用微生物は、硫化塩を水素硫化物に還元することでメタノールを酸化することが証明された(HeijthuijsenおよびHansen、1990年)。最後に、いくつかのメタノール分解種族は水素を利用することが紹介されている(HeijthuijsenおよびHansen、1990年)。

3.1.2.1.3 栄養分の利用可能性

ほとんどの微生物は、細胞の成長のために窒素やリンのような生命維持の生育要素を必要とする。一般的にほとんどの土中の微生物の生育は汚染濃度が低ppmの範囲である限り窒素やリンにより制限されることはない(Tiedje、1993年)。すでに述べたように、土中へのM100の漏洩に関して、メタノール濃度はしばしば1ppmを超え、潜在的に栄養が制限される状況になる。しかしながら、メタノールがその発生区域から流されるにつれて、濃度は下がり、微生物の活動において栄養が制限されることはなくなる。

3.1.2.1.4 適切なpHおよび温度水準

ほとんどの微生物は中性範囲(6から8)近辺の比較的狭いpHの範囲で最もよく成長する(LaGregaその他、1994年)。地下水システムにみられるpHの特有の範囲(5から9)は、一般的にフレーム構造の炭酸塩か、あるいは地下水の帯水層を形成する珪酸塩鉱物の緩衝能力を反映している(Chapelle、1992年;Kingその他、1992年)。帯水層の中のpH値のこの範囲は、天然資源から分離されたメタノール利用バクテリアのほとんどが、中性のpHの範囲内で生育することが判明しているので、固有の土中の微生物によるメタノールのバイオ分解に対する重要な問題とはならないとみられる(Komagata、1990年)。たとえ地下水のpH値が中性のpHの範囲から大きく乖離したとしても、メタノール利用微生物のいくつかの種類は2.0か5.5の範囲の酸性pH値を好むことが判明しており、他は7.0から9.5の範囲のアルカリ性pH値を好むことがわかっている(Komagata、1990年) 。

 

 

 

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