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1.0 背景

 

1.1 報告書の目的と範囲

 

自動車を発生源とする大気への炭素の排出を減らすための産業界の主要な戦略のひとつが、燃料電池を動力源とするような、排出がゼロに近い自動車の開発である。これらの自動車の利用は今後10年問とそれ以降飛躍的に増加するとみられる。燃料電池を動力とする自動車のための有力な技術のひとつが、燃料資源としてのメタノールの使用である。

燃料電池自動車が普及するにつれ、メタノールの世界的規模での使用の劇的な増加が予想される。燃料資源としてのメタノールの使用の増加により、生産、輸送、貯蔵、流通および消費を通じて、メタノールが環境ヘ漏洩する可能性が高まる。その結果、メタノールの環境への不慮の漏洩による潜在的影響や、それに続く消滅と移動、および人の健康や環境への潜在的影響に関する問題が想定される。

米国メタノール協会(The American Methanol Institute)の委託によるこの研究の目的は、環境中のメタノールの消滅と移動に関する既存の知識を要約し、人の健康や環境への潜在的な影響があれば、それをを確認することである。この報告書は、現在使用されている15%のガソリンと85%のメタノールから成る混合燃料(M85)に対するものとして、将来燃料電池自動車に使用が予想されるM100として知られている純粋メタノールの使用から生じる消滅と移動の問題に主に焦点を当てる。利用できる文献は以下に関連して検証が行われる

1) 環境中でのメタノールの分配に影響する消滅と移動のプロセス

2) 可能性のある漏洩シナリオの下でのメタノールの消滅と移動

3) メタノールの人および水生動物における毒性

4) 土壌や水からメタノールを除去するための処理過程。

加えて、利用できる情報について、メタノールの中での使用が考えられる添加物の特性に関して検証が行われる。最後にデータのギャップが確認され、メタノールの消滅と移動に関する不確実性を減らすのに適切な調査の必要性が推奨されるであろう。

 

1.2 導入と使用の歴史

 

メタノールは1800年代以降商業的に使用されるようになった、広範囲に使用される産業用化学品である。メタノールは銅をべースにした触媒を用い天然ガスと二酸化炭素を混合した蒸気から生産される。メタノールは現在、ホルムアルデヒド、酢酸、クロロメタンおよびメチル・第3ブチル・エーテル(MTBE)などを含む広範囲に使用される有機化学製品の投入原料として使用されている。メタノールはまたペンキ落とし、ペンキ、キャブレータークリーナー、プラスティック、合板および自動車のウインドウ・ウオッシャー液の中で溶剤として使用されている。

 

 

 

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