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人および水における毒性

メタノールの特性と毒性はよく理解されている。メタノールは突然変異性でも発ガン性でもない。人間がメタノールに触れる経路は吸入、摂取あるいは皮膚の接触である。メタノール蒸気の吸入は高レベルの状況では、粘膜の刺激、めまい、吐き気、頭痛および目のかすみ等の症状をもたらす。吸入が人体への接触の最も普通の経路である一方、摂取は最も深刻な健康への危害を意味する。摂取の結果、吸入の際と同様の症状が起きる。皮膚への接触に関して、メタノールは皮膚層に容易に吸収され、接触が繰り返されると湿疹、赤斑および鱗癬の原因となる。しかしながら、最近の調査結果では大量(>10mg/1)の場合にのみ人間やいくつかの動物への激しい毒性効果が見られることが示されている。米国エネルギー省は純粋メタノールよりもガソリンの方が「総体として」人の健康により有害であるとみなしている。

メタノールはガソリンのような石油をべースにした燃料に比ベ海洋生物にとってより毒性が少ない。そして短期間の接触の影響はは一時的で回復可能である。汚染防止および毒物局(The Office of Pollution Prevention and Toxics)は実験の対象となった4種類の水生魚類に対し、メタノールは基本的に毒性がないということを示した。しかしながら、地表水への大規模なメタノールの漏洩は、漏洩の直後に水生動物の生命を維持するために必要な酸素を奪い取る結果となりうる。ほとんどの漏洩シナリオにおいては、メタノールの濃度は周辺の生物に対し軽微なものであるが、大規模な漏出の直接の現場において起きるような極端な状況のもとでは、メタノールは固有の微生物や水生動物に対し毒となりうる。

推奨される調査

この要約に続く詳しい報告で、環境中のメタノールの消滅と移動に関する包括的な評価が行われている。すでに述ベ、またこの包括的な評価で確認されているように、メタノールが土壌、地下水あるいは地表水に漏出した場合、その急速なバイオ分解により、残存することはありえない。しかしながら、利用できる文献が不完全であり、データと情報の明らかなギャップを埋めることが求められるなかで、いくつかの消滅と移動の問題がある。今後の調査において3つの分野が推奨される:

● 他の燃料と同様、メタノールは性能や汚染あるいは健康問題に対応できる添加物を加えることが出来るかもしれない。もし添加物が必要であれば、これらの添加物の消滅と移動の十分な評価が推奨きれる。

● 包括的な報告書のために検証された文献では、メタノールはいったん土壌、地下水、あるいは地表水に漏洩されると急速に分解されるであろうと述べられている。しかしながら、高濃度のメタノールが漏洩の直後に現場付近に存在する場合には、バイオ分解が制限されるか行なわれないため、直接の現場の微生物にとって毒性を持ちうる。メタノール給油区域、貯蔵区域、生産場所、あるいは輸送中に発生したメタノール漏洩に関し、メタノールが急速に分解することを確認するために分析が行われるべきである。

● ガソリン・プルームと混和するメタノール・プルームの消滅と移動はこの報告書で簡単に触れられている;しかしながら、いくつかの不確実な点がある。BTEXや他のガソリンの成分の溶解度やバイオ分解速度に関するメタノールの影響の評価を含め、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン(BTEX)のプルームの消滅と移動に関するメタノールの存在の影響に関しさらに理解を深める必要がある。

 

 

 

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