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濃度がいったん毒性のレベル以下に希釈化すれば、メタノール消滅の有力なメカニズムはバイオ分解であると想定される。揮発性と化学分解を含む他の確認された消滅メカニズムと比較して、バイオ分解は土壌、地下水および地表水の環境におけるメタノールの消滅をつかさどる有力な手段と想定される。加えてメタノールのバイオ分解は好気性(酸素が存在する)および嫌気性(酸素が存在しない)の両方の状況で起こりうる。

このため、提示された3つの概念的漏洩シナリオのすべてにおいて、メタノールはその急速なバイオ分解のために土壌や水中に存続することはないとみられる。地表水への漏出の場合、メタノールは水に混和し、結果的に急速に溶解し、低濃度に希釈化されるであろう。地下水の場合にはメタノールの濃度は漏洩の状況と程度に大きく影響されるが、完全な溶解が起きれば低濃度に下がるとみられる。地表水と地下水の両方において、メタノールは予想される広い範囲の水質状況のもとで容易にバイオ分解されるであろう。

他の石油に由来する燃料(通常のガソリン、ディーゼル燃料)と比較し、メタノールはより安全でより環境にやさしい燃料である。このことから、ガソリンの漏洩により引き起こされる危険はメタノールの漏洩による危険に比ベ、より深刻であろう。そしてこれらの危険は環境の中でより長時間残存するだろう。

処理

3つの漏洩シナリオのいずれかの結果として、土中へのメタノールの漏出が生じた場合、もし天然のバイオ分解が合理的な時間の枠の中で清浄さの規格に十分対応できない時は土壌と地下水の処理が求められる。メタノールは急速にバイオ分解することから、自然減衰が土壌と水にとって効果的で安価な処理法と考えられる。もしバイオ分解が清浄化の目標を十分に満たすことができず、他の処理法が求められるとしたら、メタノールのもつ高い蒸気圧にかんがみ、土壌蒸気を抽出すれば、土壌からすべての残存メタノールを効果的に除去することが出来よう。いったん土中から抽出されれば、メタノール蒸気は蒸気位相バイオ・フィルターのような適切な技術を使ってバイオ分解することができる。

急速なバイオ分解により、高いレベルのメタノールが地下水や地表水に残存することは考えにくい。しかしながら、もし飲料水の水源がメタノールの漏洩という事態に遭遇したら、公共に給水する前に処理が求められるだろう。曝気や粒状の活性炭素など、水からガソリン成分を除去する処理技術のほとんどは、その低い揮発性と高い溶解度のため、メタノールを除去するには効果がない。逆浸透法や微小フィルターもまた、そのサイズの小ささや低い分子量のため、メタノールを除去するには不適である。

紫外線を用いたオゾン化のような高度な酸化反応は効果があると期待されているが、処理の実現可能性とコストが問題点である。生物学的処理方法は飲料水からメタノールを除去するのに効果的であり、飲料水への適用に関し、飲料水関係者の間で次第に受け入れられて来ている。しかしながら飲料水への適用における生物学的処理は未だ広範囲には利用されておらず、このため広範な法律上の承認を求められることになろう。結果として、メタノールが水源を汚染するという、起こりそうもない場合において、メタノールは生物学的方法を利用した処理や飲料水の処理の両方で除去することができる。しかしながら、効果とコスト及び公共の承認が問題点となろう。

 

 

 

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