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人間が作り出したすべての温室効果ガスの約25%は運輸に基づいている─その半分以上は小型自動車からのものである。大気汚染物質(一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素、および粒子状物質─すす、煙等)と違い、自動車からの温室効果ガスのエミッション(主に二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、水蒸気等)は、触媒転換器等の取付け制御装置を使用することにより、簡単にあるいは安価に削減できるものではない。さらに、大気汚染と違い、温室効果ガスの排出は環境保護庁により規制されていない。ガソリンの消費と二酸化炭素の排出の間の関係ははっきりしている。今日、燃料の経済性を高め、自動車の走行距離を減らし、炭素含有量の少ないあるいはゼロの燃料に転換することで二酸化炭素の排出が減少し始めるだろう。運輸部門への燃料電池の導入は燃料の効率性を高め、外国産の石油への依存度を減らし、環境の変化を緩和するための重要な戦略/技術となるだろう。燃料電池自動車は天然ガスやガソリンからの燃料で稼動し始めているため、温室効果ガスの排出は50%にまで減少するだろう。将来的には、高い効率の燃料電池と再生可能なエネルギー源からの燃料の組み合わせにより、温室効果ガスの排出をほぽゼロにできるだろう。炭素含有量の少ない燃料への早期の転換で、よりクリーンな大気とより強力な国家エネルギー安全保障が実現し始めるだろう。

 

環境の変化、温室効果ガスと燃料電池

 

温室効果ガスの排出量の増加により地球の環境が変化しているという科学上のコンセンサスが増えている。自然の温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、亜酸化窒素(N2O)、メタン(CH4)およびオゾン(O3)であり、地球が生命を維持するために基本的なものである。水蒸気を例外として、二酸化炭素の量が最も多い。1765年の産業革命以来、化石燃料の燃焼と増大する世界の人口が必要とするエネルギーの増加により、人間が作った、あるいは人的温室ガスが環境ヘ排出された。二酸化炭素は地球の大気のわずかな部分を構成するにすぎないが─3,000個の中の1個の分子─、それは近代産業社会における単一の最大の廃棄物である。大気中の二酸化炭素濃度は280ppmから現在のレベルである360ppmまで上昇し、人的に生み出されたメタンの大気中の濃度は倍増した。過去100年間において、亜酸化窒素のレベルは約15%増加した。増加した温室効果ガスは大気低層部(対流圏)の地上放射をより多く捕捉し、人為的に自然の温室効果を高める。測定が始まった19世紀中頃と比較し地球の平均気温は約摂氏1度上昇し、断片的な記録から地球はこの約2000年の間により暖かくなっていることが示されている。

 

 

 

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