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最近に至るまで、この悲劇は飛行船の船体を膨らませるために使われていた引火性の高いガスである水素により起こったものと考えられていた。しかしながら、水素は目にみえない形で燃焼するのに対し、歴史的な写真は赤熱の炎を示している。さらに、水素の漏出を検知するために水素に加えられているニンニクの臭いを嗅いだ者はいなかった。ヒンデンブルグ号の謎はNASAの水素計画の元マネジャーであるAddison Bainにより解決された。赤外線分光器と電子顕微鏡を使い、Barnは他のNASAの科学者と共同で、飛行船の外壁の繊維に存在した有機成分と原子の化学的構成を発見することができた。ヒンデンブルグ号は木綿繊維で覆われていたが、それを補強するためにドープ塗料で処理されていた。しかしながら、この塗料の成分はセルロース、アセテートや硝酸カリ(火薬)を含んでいた。アルミニウム粉(これはロケット燃料に使用されている)もまた確認された。外部構造は木製であり、内部の骨組みはラッカーを塗られたジュラルミンだった。この組み合わせは燃焼可能であり、致命的であった。

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ヒンデンブルグ号爆発の翌日、1937年5月7日のThe New York Timesの一面。

(修正カラー写真提供:国立水素協会)

 

 

 

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