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これをわかりやすくするために、通常の紙が約25ミクロンの厚さであることを想像してほしい。このようにポリマー電解質膜は紙の2〜7枚分の厚さを持っている。運転中の燃料電池では膜は十分な湿り気を与えられ、それは1枚の湿った厚いプラスチック・ラップのように見える。

ポリマー電解質膜はやや異質な電解質であり、膜は容易に水を吸収し、水の存在下で、陰イオンをその構造の中にしっかりと保持する。膜の中に含まれた陽イオンだけが動くことができ、膜を通じて陽電子(電荷)を自由に運ぶことができる。ポリマー電解質膜燃料電池において、これらの陽イオンは水素イオンあるいは陽子であり、このため陽子が膜を通過する。水素イオンが膜を通過する際の、陽極から陰極へという一方向だけの動きは、燃料電池の稼動にとって本質的なものである。燃料電池の中でのイオン電荷のこの動きがなければ、電池、電線および負荷で作られた回路は開いたままであり、電流は流れないだろう。

それらの構造はTeflonTMの主鎖に基づいているため、ポリマー電解質膜は比較的強固で安定した物質である。その薄さにもかかわらず、ポリマー電解質膜は効果的なガス分離器である。それは水素燃料を酸素を含んだ空気から隔離し続けることができるという、燃料電池の効果的な稼動に必須の形を持つ。イオン伝導体であるにもかかわらず、ポリマー電解質膜は電子を通さない。ポリマー電解質膜構造の有機的な性質は、燃料電池の稼動におけるもうひとつの基本的な要素である電子絶縁を実現している。電子は膜を通過できないため、電池の片方で作られた電子は回路を完成させるために、外部の電線を経由して電池の反対側へ移動しなければならない。電子が車や発電所を動かしたりするための出力は、燃料電池への外部回路を通過するそのルートの間において供給される。

 

電極

 

すべての電気化学的反応は2つの異なった反応から構成される:陽極で起こる部分酸化反応と陰極で起こる部分還元反応の2つである。陽極と陰極は電解質と膜によりそれぞれ分離されている。

 

 

 

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