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3.4 自動車用クリーン燃料としてのDME

 

DMEは製造段階で完全に脱硫されるので燃焼排出ガス中には硫黄酸化物(SOx)は全くなく、窒素酸化物(NOx)を含めた排出について、酸化触媒を装着した場合、米国の超低排出ガス自動車(ULEV、Uitra Low Emission Vehicles)規制値に適合可能である。また酸素含有率が高く、かつ炭素─炭素結合を持たないので、煤塵は発生しない。火炎は天然ガスのように可視青炎であり、LPG用のコンロがそのまま利用でき、ホルムアルデヒドは生成しない。また、CO2発生量ではDMEは燃焼だけではメタノールと同等でLNGより2割多いが、LNGと異なり天然ガス中のCO2を原料として 利用できるので天然ガスから遡って発生するCO2発生最はLNGの場合に近づく。以上のように環境問題からDMEはクリーンな燃料として自動車用及び発電用の燃料用途で期待されている。DMEは表3-1-1に示したようにセタン価が高く、トラック、バスなどのディーゼルエンジンを搭載した自動車の燃料として適している。燃料中に酸素を含み、燃焼しても黒煙が発生しない。窒素酸化物(NOx)は、従来の軽油を用いたディーゼルエンジンと同程度排出されるが、黒煙が出ないため、排気再循環(EGR)*、NOx還元触媒*等のNOx低減対策が容易に行えるという特徴がある。

*排気再循環

排気を吸入空気に一部戻すことで、排気中のNOxを低減する方法。

*NOx還元触媒

ディーゼルエンジンなどのように排気中に酸素が過剰にある状態でもNOxから酸素を取り除き、NOxを低減することができる触媒。

 

3.5 DME自動車

 

3.5.1 スウェーデンにおけるDMEバス

スウェーデンのボルボトラック社とボルボバス社は、共同で最新のDMEエンジンを開発した。このエンジンはバスに搭載され、実際の路上で運行評価が行われる予定である。ボルボ社の発表によると、DMEエンジンから排出されるガスの量は、欧州委員会が2005/06年に制定を予定しているユーロIV基準*に余裕を持って適合することが可能で、エンジン出力やトルクはディーゼルエンジンと同等なレベルを確保できるという。

DMEは、石油系以外の資源からも製造することができ、ディーゼル自動車や燃料電池自動車に利用することも可能である。ボルボ社は、この路上での運行評価によって、トラック燃料やバス燃料としてのDMEの使用可能性を示していく考えである。ただ、DMEが商業的に成り立つ燃料となるためには、自動車会社、部品会社、燃料業界間での調整努力が必要だとの認識をもっている。

*1ユーロIV排出ガス規制

欧州委員会は、ユーロ排出ガス規制より一段と厳しいユーロ4基準を、2005/06年に制定することを予定している。規制値は現在まだ提案中であるが、許容排出ガスレベルはユーロ3基準比40%減となる見通しである。

(ユーロ3の規制値は次のとおり)

一酸化炭素(CO) 2.0g/kWh、炭化水素(HC) 0.7g/kWh

窒素酸化物(NOx) 5.0g/kWh、粒子状物質(PM) 0.12g/kWh

 

 

 

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