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東アジアにおける現在の海洋資源開発のシステムは、国家の義務と権利を基本としている。しかし、それは、各国の主張する海洋管轄権が重複することの多さ、合意された海上境界線の数の少なさ、自国の利益追及に大きく基づいた各国の行動、これらの原因によって役に立たない状態になっている。この地域ではある程度まで、海洋環境の野放図な汚染、乱獲、海洋環境の劣化、広範囲に広がった(無免許操業、海賊行為や麻薬密輸などの)不法な海洋活動、資源に対する主権的権利を取り巻く不確実性のために、必要な資金を借りることが出来ない国々、といった海洋の混乱が現在広がっている。東アジアの海洋の地勢の特質は、一方的な排他的経済水域(EEZ)と資源に対する主権的権利のシステムが、海洋環境の管理に対して有効なシステムにはならないことを意味している。

これらの問題は、主権、一方的権利、そして合意された海上境界線に基づかない資源開発に対する新たなアプローチが見つからない限り、国家安全保障に対する必然的なリスクとして今後も続くであろう。これらのアプローチは、下記のうちのいくつかもしくは全てを含むこととなろう:

 

* 主権の問題を棚上げして、独自の需要、保全の必要性、最適な利用に応じて資源を管理、開発する資源管理に対する機能的なアプローチ;

* (オーストラリア-インドネシア間で締結された、チモール海の係争区域における炭化水素資源の開発のためのチモール海峡条約(Timor Gap Treaty)のような)特定の資源に対する共同開発;

* 共同の資源区域から、それぞれの国家が経済的な恩恵を共にしながら環境管理下の沿岸を広げ、将来の共同資源排他的経済水域(EEZ)地帯へと拡大すること(50);そして

* 管轄権が重複もしくは隣接する海域における近隣諸国による共同パトロールと資源保護の作戦。

 

これらのアプローチを発展させるには、海における境界線を陸地で引くのと同じような試みで画定しようとする現在のやり方とは異なった発想の転換が必要である。東アジアでは、直線による海上境界線の場所はほとんどありえない。資源の管理と開発に関する緊急の課題は、その基礎をなしている主権と境界線問題に関して合意に達することを必要としない解決法を見つけることである。これらの問題を解決するための地域協力は、重要な地域の信頼安全保障醸成措置を作りだすと考えられ、可能な代替アプローチのための対話を早急に始める必要がある。

 

 

 

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