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残念なことに、その結果は別物であった。環境政治の分野のある著者が指摘したように、「排他的経済水域(EEZ)の宣言と主権の拡張は環境保護の責任とは逆の動きをすることがある」(43)。「汝の隣人を貧しくせよ(beggar thy neighbour)」的姿勢は資源開発と公害の問題において継続する可能性がある。海洋法条約の勧告的な方針があるにも関わらず、自国の境界線を基準とするよりも生態系(44)を基準とした方が、海洋資源と環境に関してより良い管理が可能となることをいまだに各国は認識していない。この論文の基本的な論題を再び述べると、もし、主権と主権的権利に基づいた一方的な海域管轄権の主張を諸国が思い止まることができるならば、海洋の環境管理と地域の安全保障は双方とも強化できるということである。残念ながら、アジア太平洋地域の現実の状態を見ると、これらの多くの主張はすでに堅く根を降ろしており、以前の状態に戻すのは難しいであろう。

近年、やがてこれが海洋の完全な囲い込みをもたらしかねない、排他的経済水域(EEZ)の概念には2つの主要な傾向があることが論議されてきた:

 

それは、沿岸諸国が、規定した区域内における幅広い活動をいっそう厳しく規制してゆき(強められた(thickening)管轄権)、一方同時に、それらの規制が及ぶ範囲を200海里以上に拡大してゆく(拡大された管轄権(creeping jurisdiction))(45)、の2つである。

 

排他的経済水域(EEZ)レジームは、沿岸国に排他的経済水域の資源に対する主権的権利を認め、資源の探査と開発、海洋環境の保全と保護、科学的調査の実施のための規則を制定する権限を与えている。「強められた(thickening)管轄権」とは、沿岸国の管轄権の正当な行使として、排他的経済水域(EEZ)内の活動に対する規制を厳しくてゆく、または、通常は沿岸国の管轄権の範囲とは見なされないところにまで活動に対する規制を拡大するものである。付加的な科学的調査は管轄権の延長として前者の例であり、また、安全保障海域の設定及び他国に対する軍事活動の禁止は後者の例である。

排他的経済水域(EEZ)内の資源に対する沿岸国の主権的権利は、種の保存を含めた海洋環境の保全と保護に対する責任にとしてその資格が与えられている。沿岸国には、排他的経済水域(EEZ)内の生物資源の漁獲可能量(海洋法条約(LOSC)61条(1))、及び自国の能力範囲内での漁獲量(条項61(2))を決定する義務が課されている。ある種が必要以上に捕獲されていないこと保証するためのこの責任の委託は、主として管轄権の問題及び漁業管理についての域内諸国間の協力がされていないために、東アジア海域における特定の種の乱獲を防止するという面では役立っていない。

 

 

 

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