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5:海洋鉱物資源

 

東アジアのほとんどの国の沖合いには炭化水素資源の埋蔵が見込まれている。エネルギー供給に対する需要の増大とその確保に対する関心の増加という状況では、事実上全ての域内沿岸諸国が、海域に対する権利の主張と原油と天然ガスの探査にかなり熱中している。炭化水素資源の他に、日本海と東シナ海は地質学的な断層と広がりから見て、海底に、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、金や銀などの金属硫化物が存在する有望な区域である(36)。東アジア地域における非生物海洋資源の開発は、生物資源の管理の問題よりも、管轄権の問題によってより一層妨げられている。利権の重複は、中国と台湾の間の南シナ海、日本、韓国と台湾との間の東シナ海、日本と韓国の間の日本海などを含め、東アジア海域の全域を通じてごく当たり前の状況である(37)。この状況は、域内諸国の海洋鉱物資源の開発能力に関して、重要な意味を持っている。多国籍の資本、専門知識及び機材を持込むことに対して、「未解決の海上境界線は重要な抑制因子となっている」とマーク・バレンシアは述べている(38)。海上境界線の問題を解決することは、炭化水素資源や他の海洋鉱物資源の開発における必要条件である、しかしながら、すでに述たように、合意された境界線の数はごく少数である。

 

6:排他的経済水域レジーム

 

排他的経済水域(EEZ)レジームは、国際法上の劇的な発展であったが全体としての意義は現在ようやく評価されつつある。残念なことに、排他的経済水域(EEZ)レジームは、海洋管轄権の問題の解決を促進し海洋環境の管理基準を改善するどころか、現実には、より大きな不安定と管理基準の低下を産み出したことが明らかになりつつある。これは、排他的経済水域(EEZ)の存在は「融合よりも分割」を生じさせている(39)、と韓国の著名な海洋法専門家が述べているが、東アジア海域においては将にそのとおりである。このレジームは、ある海域に対する主張の対立があり、広大な排他的経済水域(EEZ)と海洋資源の保護のためということで、アジア太平洋地域に海の軍拡をもたらし、ミサイル哨戒艦艇や海上攻撃機を含む海洋行動能力を獲得するための理由付けとしてしばしば用いられた。アンドリュー・マックは、「太平洋においては、排他的経済水域(EEZ)の保護が必要性であるという考え方は、水上艦艇の大きな増加へつながった」と主張している(40)。これは「囲い込みの運動の悪い面」で、「なぜならば、国家には守るべき200海里の排他的経済水域(EEZ)を持ったために、また新しい海軍の任務を持った」のである(41)。

排他的経済水域(EEZ)レジームは、それを通じて沿岸諸国の管轄権が隣接する海域の上にまで延長された、「拡大された管轄権(creeping jurisdiction)」や「海洋の囲い込み運動(ocean enclosure movement)」などの様々な名称で知られている過程の一部である。沿岸国の管轄権と責任が増加したことにより、海洋の環境管理の向上、海洋環境の保護と保全の強調、そして各国が自国の利権を追及することとなり、全ての国が敗北するような状況を作り出す「共通の悲劇」へ向かおうとする傾向を抑制することが期待されていたのである(42)。

 

 

 

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