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4:東アジアにおける漁業

 

東アジア諸国のほとんどにおいて、漁業は大切な食料源であり、西洋諸国に比べ、蛋白源を魚や海産物に大きく頼る傾向がある。生計のための漁業と国内市場への供給の重要性とは別個に、多くの東アジア諸国は排他的経済水域(EEZ)の生物資源を輸出による収入のための重要な源として見なしている。1985年の推定では、東南アジアの少なくとも500万人が生計のための漁業に直接依存しており、また少なくとも2500万人が地域の水産業に関する何らかの形で関係している(31)。魚と漁業はラオスとブルネイ以外の全ての域内諸国では、開発事業の中で重要な優先事項となっている。

資源と漁場を共有することは共通の利益を生み出すが、一方では、それらはまた、特に管轄権問題と資源へのアクセスの問題が存在する場合、潜在的な緊張の源を作り出すこととなる。漁船が発砲されたり更には沈没させられたりなど、これまでに多数くの事件が発生しており、係争中の海域で漁業活動を行う際に、漁業船舶が海軍の艦船に護衛されることは珍しくない。この状況は、近隣諸国間の海軍兵力による直接衝突の危険性をはらんでいる。タイの漁船はカンボジア、ベトナム、ビルマそしてマレーシアによる武力攻撃と拿捕の危険にさらされていることもあって、タイの漁船団は特に脆弱である(32)。

持続可能な発展、漁業及びそれらの管理という極めて重要な意味で、東南アジアではこれまでに「急激で大きく計り知れない沿岸環境の損失と悪化」が生じている(33)。漁業資源は、水産養殖場を作るためのマングローブの伐採や珊瑚礁の開発、及び海草床の破壊といった生態学的に有害な行為によって影響を受けている。その他にも、入江における沈殿、陸に起源する汚染、ダイナマイトの使用、非常に細かい網目の魚網の使用、不法漁業などの問題がある。当初、水産養殖は枯渇した漁業資源問題の解決策と見なされていたが、多くの水産養殖の開発計画が期待を裏切るとともに、公害と自然環境の破壊の問題を引き起こしてきた(34)。

フィリピンに本拠地をおく水中生物資源管理国際センター(ICLARM)は、発展途上国の低所得者の現在そして未来の世代の利益を維持するために、海洋生物資源の管理を改善するための調査とそれに関連する活動に対する指導を担っている指導的な国際施設である。水中生物資源管理国際センターによる最近の報告書は、その将来の事業に強い影響を及ぼす鍵となる3つ要因を発表した。それらは:世界の捕獲漁業、特に海洋漁業における窮状;水中生物の多様性についての科学的知識、利用及び保護に対して大きな貢献が可能な生物の多様性条約(Biodiversity Convention)に対する支援の必要性;そして、単なる食糧生産としてよりもむしろ、食糧の安全保障及び天然資源ベースの持続能力としての重要性である(35)。

 

 

 

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