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それは単に等距離の問題のみではなく、海岸線の長さや向き合うまたは隣接する海岸の地形(特にそれらが凹型か凸型であるか)を含む地理的な特徴、そして政治的な要因に対する考慮が同様に与えられるのかもしれない。例として、国際司法裁判所(ICJ)は海上境界線の審議において、伝統的な漁業活動(24)、関連各国の生存と経済的安定に対する相対的な影響(25)、そして当該領域における政治的情勢(26)に対して配慮を示している。排他的経済水域(EEZ)レジームは、大陸棚の境界画定において主として考慮すべき本来の概念としての「自然の延長」よりも、むしろ等距離と公平性の両原則により大きな比重を与える傾向がある。これは、領土の自然な延長を判断する上で、地質学及び地理形態学的な要因を考慮したものである(27) 。近年の境界策定のほとんど全ての例では、各国は排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の双方を1つの境界線として交渉することを望んできた。

1つの国が海床とその下の資源に対して主権的権利を持ち、そしてその上にある海洋に対しては別の国が管轄権を持つといった、複数国家による管轄権の重複は海洋の環境管理について難しい問題をもたらすであろう。それはまた、避け難い管理上の困難さをいかに解決するかについて、いまだ良い経験を持たないという国際法の比較的新しい問題である。それは、重複する管轄権という状況が境界線交渉の結果としてあたりまえになる可能性が高い東アジア周辺海域の海洋資源開発において、特に重要な問題になるであろう。このような状況では、海洋管轄権を持つ国がその主要な責任から判断して海洋の環境保全と保護に関して、より強い立場にあることを期待することは論理的であろう。

海上境界線の画定において生じるもう1つの問題は基線の問題である。海洋法条約に対応するため、領海(28)、排他的経済水域(EEZ)(29)、そして今や大陸棚(30)の幅も同様に、条約に従って確定された基線から測定されなければならない。しかしながら、これまでのところ比較的少数の域内諸国のみが領海の基線を公表するに留まっており、その内(1996年に5月に直線基線を発表した中国を含む)一部は直線基線の使い方が過大であったと一般に見られている。群島国家を取り囲む群島基線に関しての数値的規定が条約に定められている一方、非群島国家に対する直線基線に関してはそのような規定がなされていないために、直線基線において特別な問題が生じている。海岸の低潮線に沿った通常基線の場合は比較的簡単であるが、各国が海洋法条約の7条に沿って直線基線を使用する場合には、さらに多くの困難がもたらされる。

これらの適応は厳密に定義された状況(すなわち、海岸線が深くぎざぎざになり内側へ切り込んでいる場所、もしくは、島の周辺部が海岸のごく近い場所にある場合)にのみで認められるのであるが、直線基線を可能な限り利用することは各国にとって国益の範囲内であり、しばしば一般的に判断して認め難いと判断されるような状況下でもそれを主張する事態が増えつつある。

 

 

 

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