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平成11年 公海の自由航行に関する普及啓蒙事業 第1回海外調査(マニラ)

 

第32章 東アジアにおける海洋資源開発5

 

地域の安全保障における意義

 

サム・ベイトマン著

(ウーロンゴン大学海洋政策センター 豪ニューサウスウェールズ州)1

翻訳 麻生洋子

 

1:はじめに

 

東アジアの海洋環境は並外れて複雑であり、生物及び無生物の両海洋資源が非常に豊かである。東南アジアの海では、豊富な珊瑚礁、マングローブそして海草床が、豊かに溢れた海洋動植物を-恐らく世界で最も多様な海洋植物相、動物相を-支えている(1)。またこれらの海の底には、既に原油や天然ガスが産出していたり、さらには大きな炭化水素資源の埋蔵が見込まれる海盆が横たわっている。これらの大部分の水域は比較的水深が浅く、砕岩質の鉱物資源の採掘と海底魚のトローリング漁の可能性を持っている(2)。

北東アジア水域には、固有の気象条件と海流にはぐぐまれた膨大な魚類が生息し、世界で最も生産力のある漁場を形成している(3)。東アジア諸国は伝統的に食料源を海に大きく依存しており、更には将来の経済発展へ向けて、潜在資源としての海底原油と天然ガス資源への期待が次第に高まっている。特に黄海と東シナ海の海盆は、炭化水素資源の存在と将来性が高い海域として認識されている(4)。

経済成長と海洋資源に対する需要との間には明らかに強い相関関係が存在する。一人あたりのそして処分可能な所得が高くなるほど、海洋食料資源への需要が高くなることを意味し、一方、産業の発展と製造分野の急激な成長は、エネルギー需要の増大と輸入原油への大きな依存につながっている。

 

1 Sam Bateman, “Exploiting East Asia's Marine Resources - Implication for Regional Security,” a paper prepared for Workshop on East Asia Security at the Wilton Park, July 1996. この論文は1996年に発表されたが、翻訳した理由は次のとおり:海洋資源に関する包括的論文で資料としてよくまとめられている。1)漁業、2)鉱物資源、3)EEZレジーム、また、各国の協力の必要性を判りやすく説明し啓蒙的に価値があるため。

 

 

 

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