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他方、日本側のオフサイト制約を考慮した日韓提携ケース2では、日本から韓国へLS重油が輸出されるほかに、大量の深度脱硫軽油が韓国へ輸出される。そして韓国の強力な輸出インフラストラクチュアを用いて高品質軽油および途上国向け適合品質軽油を中心とする域外輸出が韓国から行われる。韓国から日本への輸出は、HS重油に絞られることになる。日韓提携ケース2では、日韓提携ケース1と比較すると、域外輸出製品の高付加価値度が低下する結果となっている。

尚、日韓間の貿易量は年間30〜38百万KL(1997年の2.7〜3.5倍)へと活発化する。特に3万トンサイズのジェット・軽油の物流量が増加する。今後将来の海運能力に付いても検討していく必要がある。

 

5.1.2.:日韓の提携による脱硫・分解設備の稼働変化をみると、脱硫設備では日本の直接脱硫装置および分解設備では、日本のコーカーの稼働率が上昇しているのが特徴である。韓国では、フル稼働状態が持続している。

 

5.2.:提携による収益(経済性)の変化

 

5.2.1.:日韓が提携した場合の収益の変化を基準ケースからの差としてみると、日韓提携ケース1では2.56億ドルの収益増、日韓提携ケース2では1.75億ドルの収益増となる(図-12)。脱硫・分解設備の稼働が上昇し、北米西海岸を中心とする高品質軽油の輸出となるので、精製費、輸送費いずれも増加するが、効率化が図られて原料費が幾分縮小するとともに、何よりも域外輸出製品の高品質化による販売高の増加が収益に大きく寄与している。

日韓の相互融通による石油製品貿易は、より高効率に両国の内需を充たしつつ域外輸出の付加価値を更に増加させる働きを持っている。日韓石油産業の提携によって年間1.7〜2.6億$の収益向上が期待される(表-3)。

 

5.2.2.:さらに韓国と日本に対して、アフリカ原油の追加入手可能性をそれぞれ25万B/Dずつ合計50万B/Dのフレキシビリティを与えて、中東原油との振り替わりがもたらす効果を分析した(表−4)。

収益変化の合計をみると、各ケースにおいて1.0〜1.5億ドル増加する。アフリカ原油の調達は、輸送費がかかる上に価格面でも中東原油より幾分高いので、原料費負担が増すことになるが、高品質軽油をより多く域外輸出できるので、販売高もそれを上回って増えることになる。アフリカ原油の調達は、中東原油の割高感に対する値下げ圧力の効果も期待できるので、重要な位置付けをもつオプションの1つといえる。

 

6:日韓提携オプションの具体的な分野と今後の検討課題

 

6.1.:提携オプションが具体的な可能性を持つ分野として、1] 日韓間の石油製品相互融通、2] 日韓の提携による石油製品輸出の拡大と効率化および3] 原油の共同購入、共同輸送等を挙げることができる。

 

 

 

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