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さらに、基準ケ−スと日韓提携の2ケースに対して、アフリカ原油を調達して中東原油との間で振り替わりが起こる場合に、日韓間の石油製品の相互融通あるいは域外輸出にもたらされる効果とその経済性を分析する。アフリカ原油の調達は、割高感をもって推移する中東原油の価格に影響を及ぼすことができる有力なオプションである。

 

4.1.2.:この経済性の検討のために、本研究では日韓8製油所と8需要地および2輸出市場(アジアと北米)からなる石油精製モデルを開発した(図-9)。

この精製モデルでは、日韓の収益最大(プロフィットマックス)を目的関数として最適化を行う。収益(P)は、8需要地と2輸出市場のそれぞれに設定した各種石油製品の販売価格に基づく売り上げ高(S)から、【8製油所から10需要地までの各製品輸送運賃(T1)、産油国から各製油所までの各種原油輸送運賃(T2)、製油所のエネルギーコスト(E)、触媒・水道・薬品費(W)、原油代金C(金利、保険料込み)】を差し引いたもの(P=S-T1-T2-E-W-C)である。

 

4.2.:経済性検討の前提条件

 

日韓提携オプションに関する経済性検討をモデル分析で行うために、国内需要、精製設備、原油の入手可能性、原油・製品価格、輸送コストなど様々な前提条件の設定を行った。その内容を表に示す(表-2)。

 

5:日韓提携オプションの分析

 

5.1.:提携による石油製品貿易と設備稼働の変化

 

5.1.1.:基準ケ−ス

で、日韓両国による域外輸出は、日本の製油所稼働が上昇する結果、約4,100万klに達し(図-10)、1997年の域外輸出実績と比較すると1,000万kl程度の輸出増となる。

基準ケースに対して、2つの提携ケースをみると、域外輸出の量的な変化はそれほどないが、高品質軽油の輸出増とHS重油の輸出減を中心に輸出製品の質的な変化がみられる。日韓提携ケース1の場合は、日本側のオフサイト制約を考慮せず、日本からも自由な輸出ができることを前提にしており、日本から域外への高品質軽油の輸出が大幅に増大することが特徴である(図-11)。高効率のトッパーで生産されるジェット燃料油とHS重油を韓国から日本へ輸出し、日本の脱硫・分解余力を有効利用することで、高品質軽油の生産を最大化している。日本から韓国へは、硫黄分規制の強化で需給が苦しくなるLS重油の輸出が行われている。

 

 

 

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