3.2.3.:わが国の石油産業の弱みの1つは、韓国やシンガポールなどと比較した場合に、精製コストが相対的に割高となっていることである(次頁図-7)。特に固定費を含んでみる場合は、白油化、環境規制、安全規制などに対応したわが国固有のコストが含まれているので、割高となる。アジアにおける石油製品輸出活動は、シンガポール市場で形成される精製マージンを指標として、マージナルな変動費+αのベースで行われる。変動費ベースでもわが国の精製コストは韓国やシンガポールと比べて多少割高であるが、変動費ベースで考えるのであれば、わが国の石油製品輸出が競争力を持つ機会は多く、石油製品輸出も一定の収益に寄与できるオプションの1つとして重要な位置付けを持つようになってきた。
3.3.:日韓提携検討の意義
3.3.1.:わが国の石油産業は、近年国内の企業間の相互融通によって物流合理化を図ってきたが、日韓の既設精製能力の立体的なロケーションを考慮すると、さらに日韓企業間で石油製品の相互融通を図ることも、相互に一定の経済的効果を生み出す可能性があると考えられる。
3.3.2.:通貨危機が引き起こした課題に直面する韓国の石油産業と規制緩和が引き起こした課題に直面するわが国の石油産業は、それぞれ相互に補完しあえる可能性も有している。これらの諸点も考慮しつつ、今後のアジア石油市場の将来展開も踏まえると、日韓石油産業の提携オプションの可能性に経済的検討を加えてみることは、大いに必要かつ重要であると判断される。
4:日韓提携オプションの経済性検討
4.1.:経済性分析のフレームワーク
4.1.1.:提携オプションの経済性検討のため、ここでは3つのケースを設定した(図-8)。基準ケースでは、日韓間の石油製品貿易は1997年実績で固定し、両国がそれぞれ単独で製油所の稼働を上げて域外(以下では日韓域外を意味し、アジアおよび北米西海岸市場を指す)への石油製品輸出を拡大する場合をモデル分析する。これに対して、日韓提携ケース1では、日韓間の相互融通を自由にして両国が域外への石油製品輸出をフリーに行う場合を分析する。日韓提携ケース2では、日韓間の相互融通は自由にするが、日本は輸出活動がオフサイト(バース、製品タンクなど)制約を受ける可能性があるので、日本からの域外輸出は1997年実績を最大と設定して分析する。日韓提携ケース2では、韓国へ転送してそこから域外へ輸出する場合を分析することとする。