今後LG-Caltexの7万B/Dの重脱硫設備の新設が計画されているが、通貨危機の影響で他の脱硫設備の新・増設は考えにくい。さらに2000年代初頭の重油規制強化が予定通りに実施されると、硫黄分0.5%以下の重油が需要の70%以上になり、韓国の低硫黄重油の不足は深刻な状況になる可能性が高い。
トッパー能力で見たように、韓国の製油所規模は大きいので、オフサイト能力をみた場合にも製品輸出関連設備の能力が高いことがわかる。製品タンクは内需対比30日程度で日本よりかなり高い能力を持っている。このことは製品輸出に有利な条件を韓国の製油所が整えていることを示す。
韓国最大級の製油所で港湾能力をみると、原油用には30万トン以上の船が着ける桟橋が2基あり、製品用には最大15万トンの桟橋を1基、7万トンの桟橋を2基持っている(表-1)。製品用桟橋の規模が大きいことは韓国の製油所からの製品輸出の大きな力となっている。一方、日本で最大級の製油所の桟橋規模をみると、原油処理用はトッパー規模に比べて遜色ないが、製品用は8万トンの桟橋が1基しかない。これは、一般的な輸出船の規模である5万トン級の船が日本の製油所では同時に1隻しか着けないのに対して、韓国の製油所では3隻が同時に着けることを意味している。また、韓国では離桟と荷役に対する時間制約がなくて、夜間でもこの作業を実施できることも強みである。このような韓国の製油所の桟橋規模と使用時間の融通性をみると、韓国の製油所がトッパーの大きさと同時に製品輸出に関して大きな設備メリットを持っていることがわかる。
韓国は、トッパーとオフサイトの両面で製品輸出に関して規模の経済性を十分に発揮できる設備能力を持っている一方、脱硫設備の不足が今後の大きな課題になっている。大きな資金負担をできるだけ持たないで、2000年以降の重油硫黄分の規制強化に韓国がいかに対応していくかが極めて重要である。
3.2.:日本の石油産業が直面している課題
3.2.1:1996年3月末の特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)廃止で石油製品輸入が自由化されたため、わが国の国内石油市場では競争が激化した。最近の国内石油製品価格は、国際価格水準(輸入製品の水準)と比べてあまり格差がない状況となっている。
石油連盟資料によると1993年時点で3,701億円あった石油産業の経常利益は、1997年時点では621億円となり、売上高経常利益率も0.5%を下回る水準へ低下した(図-4)。
3.2.2:石油産業にとって製油所の設備稼働を上昇させ固定費負担を軽減することは、コスト削減オプションの1つとして重要である。石油製品の輸出は、製油所の稼働を上昇させるための有力な手段である。韓国ほどに石油製品輸出が大きな重みを持っていないが、わが国でも1989年頃から徐々に石油製品輸出が拡大してきた(図-5)。
特石法の廃止と対応する形で、1997年7月には石油製品輸出の自由化が実施された。韓国からわが国へのナフサ輸出を除くと、韓国とわが国相互間の石油製品貿易は、まだそれほど大規模なものになっていないのが現状である(図-6)。