すでに述べたとおり、地形を判断するためのルールには、その判断基準に明らかに矛盾があるようである。たとえ、自然が造り替えられる筈はないという基本的な判断基準であっても、地理的な特徴を不つり合いにゆがめる結果になることを避けることは大変重要なことである。
従ってすでに述べたとおり、それは2つの判断基準のバランスの問題であり、そのようなバランスは一つの事例のある地理的特性についての論拠を検討すべきである。
16. 自然を造り替えないためには、造り替えられない自然を正しく理解することが重要である。すでに述べたとおり、この地域の地勢は中国大陸と琉球列島の長い弧との平行線で特徴づけられる。
この点について、特に東シナ海が半閉鎖海(セミエンクローズド・シー)あるいは縁辺海(マージナル・シー)と記述されていることは注目に値する。島々は実質的にはその間にある海によって隔てられているが、半閉鎖海という特性を作り出しているのは琉球列島である。
別の言い方をすれば、これらの島々の大きさ及び方向は、全体として密集して堅固であり、半閉鎖海を作り出すには十分である。この発見は、この地域の地勢的環境を、多くの島が正対する2国の間の中間線の中央部あるいは反対側にある場合のように、簡単に特徴づけることは困難であると考えられる。更に、日本が日本本土を形成する北海道、本州、四国、九州を含む3922の島々から成る島嶼国家であることを考えれば、そのような特徴は、実際の地勢の状態を描き出していないようである。
17. 半閉鎖海あるいは縁辺海としての東シナ海の特性の重要性は、そのような海を作り出している琉球列島の役割を見落してはならず、また、この地域の地図をいちべつすれば、誰もが中国と日本の海岸線の長さが際立っていることに気付くであろう。
ある人の説明によれば、杭州湾の南端から台湾の対岸にある福建省の海壇島(Haitan)までの中国の海岸線は琉球列島とほぼ平行に走っており、その距離は約365マイルであり、一方、東シナ海に面する琉球列島の海岸線の長さは205マイルである。この島弧は、日本本土の海岸からほぼ一直線に伸びてはるか台湾付近の海域まで達し、実際の海岸線の長さは中国大陸の海岸線に比べてかなり短いという事実にもかかわらず、これらの島々を基点とする等距離方式を用いる場合、琉球があたかも長い間、九州から伸びている岬であったかのように取扱われるという結果をもたらすことであろう。