この地域のより複雑な最新の海上における安全保障の環境では、地域内の海上における危機削減の可能性及びCBMsについて改めて検討する必要がある。これら海上におけるCBMsの特別な関連性を検討するに当たっては、アジア太平洋地域のユニークな特質に注目しなければならない。CMMsについての最近のある研究は次のように述べている。「この地域は、信頼醸成努力が追求されてきた他のどのような地域よりも、地勢的にも政治的にも文化的にもより多様である。おそらく最も重要なことは、世界中で最も爆発しやすいホットスポットの中の一つであると心配したとしても、アジア太平洋は、全体として積極的な敵対関係としてよりは紛争に対するポテンシャルとして性格づけられることである。領土問題、経済及び資源に対する利益の競合、長びく国内の不安定は緊張の高まりと紛争の回避を目的とする方策の必要性を示している。(*4)」これは、むしろ対決をいとわない状況下で方向づけられたこれまでの海上におけるCBMsの経験は、アジア太平洋地域とは無関係であると言うものではなく、むしろそれぞれの経験を注意深く適用することを検討するということを示すものである。またアジア太平洋地域内の地勢上の不均衡から見て、あるCBMsについては北東アジア、東南アジア、南太平洋及びインド洋それぞれの間でさまざまなサブリージョナルなアプローチが必要かも知れない。北東アジアでは、4大勢力(米国、ロシア、日本及び中国)の海洋における権益及び兵力が入り組んでおり、よそよそしい関係が続く朝鮮半島は、関係正常化についての政治的前提条件がないままの信頼醸成は、冷戦型の紛争回避措置に限ることが最善であることを暗示している。東南アジアには、ごく最近できたくもの巣状の2国間と多国間の信頼醸成措置及び協力的な海洋施策によって補完される非公式なASEAN海洋協力の長い歴史が存在する。南太平洋では、オーストラリア、ニュージーランド、及び太平洋島嶼諸国の間で、排他的経済水域(EEZ)の監視及び漁業資源の管理といった非軍事面の海洋に関する懸念に焦点を当てた広範な協力的海洋制度が発展している(*5)。インド洋地域では、地域を限定した海洋CBMs及び協力を焦点とした検討は余り行なわれていない。北東アジア及び東南アジア双方において現存する主要な領土問題の場は海洋である。例えばロシア・日本(千島列島、北方領土)、韓国・日本(独島/竹島)、中国・日本(釣魚島/尖閣諸島)、同様に台湾との間でも、南シナ海では西沙群島(ベトナム・中国)、及びスプラトリー/南沙諸島(中国、ベトナム、マレーシア、台湾、フィリピン、ブルネイ)。CBMsは正式の外交上/正当な交渉に代わり得ないが、海上におけるCBMsは、そのような状況下での紛争の危険性を極限するうえで特に価値があろう。