さらに前の事件を追っていくと、奇妙な事実にぶつかる。95年やはり海賊に襲われ中国で見つかったアンナシエラ号事件。犯人の顔写真をアロンドラレインボー号事件のものと重ねてみる。すると名前は違うが、瓜二つの顔があった。インドネシア人ゲーリー。】
「ゲーリーについては三つの事件にかかわっていた可能性が高いと思います。一方のプトラは二つの事件で間違いなく重要な役割を負っています」
(IMB国際海事局・ジャヤンド・アビヤンカ副局長)
【ゲーリーは三つの事件全てに姿を現す。プトラはアロンドラレインボー号事件とテンユウ号で、燃料補給を担当していた。三つの事件は同じシンジケートによるものなのか。】
「アロンドラレインボー号事件の組織は前の二つよりもずっと大きな組織でたくさんの国の人間がかかわっています。華僑組織にインド人シンジケートが加わりつつあるようです」(国際海事局・ジャヤンド・アビヤンカ副局長)
【海賊は華僑組織にインド人が加わった巨大シンジケートになっているという。そして私たちはついに海賊幹部の直撃インタビューに成功した。】
[バタム検事局(インドネシア)、海賊司令室からの押収品が並ぶ]
【98年11月インドネシアで海賊の司令船と見られる船が拿捕された。これはその船からの押収品だ。船名を変えるためのペイントスプレー、そして[文字の]型紙が何種類もある。船を襲っては船名を変え姿をくらます。海賊の手口がかいま見える。これが海賊の司令船プロマス号だ。この司令船に乗っていた人物こそ襲撃部隊の指揮官だった。そのウォンと呼ばれる男は98年に逮捕され、懲役6年の判決を受けた。】
[襲撃部隊司令官ウォンの画像]
「ウオンは襲撃を準備する部隊の幹部でした。その地に香港人、台湾人、マレーシア人の実行部隊幹部がいて、大ボスは中国人です」(インドネシア西艦隊治安部隊・カスナディ司令官)
【ウォンは判決を不服とし、現在最高裁に上告している。(バタム島刑務所)拘留中のウォンを直撃した。ウォンは撮影を拒否したが、インタビューには応じた。初老の、目の鋭い男だった。】[会話は英語、訳は字幕]
「あなたは有罪ですか無罪ですか?」(島)
「無罪だ」(ウォン)
「検事局と海軍はあなたが手錠や武器を持っていたと主張するが」(島)
「手錠なんかどの船でも持ってる。ナイフだってそうだ。調理に使ったり……」(ウォン)【これが彼の言う調理用ナイフ[画像]。】
「プロマス号の持ち主は?」(島)
「マレーシア人の「ヌン」という男だ。私は船の手配をするだけだ」(ウォン)
「持ち主には連絡したのか?」(島)
「連絡した」(ウォン)
「持ち主はインドネシアに来たのか?」(島)
「来ていない……」(ウォン)
【自分の船が押収されたというのに持ち主は一度もインドネシアに来ていないという。まか不思議な話だ。そもそも彼の所持していたシンガポールの旅券すら偽物だったのだ。
ウオンが逮捕されたバタム島はアロンドラレインボー号を襲った海賊たちの出発地点でもある。中国人ボスはこの周辺の海賊を支配していたのか。インドネシア海軍も警戒を強め、日常的に不審な船を調査しているのだが。】
「われわれはアンボン、アジェなど国内の治安の間題を抱えている上、資金がなく船や機材が不足し、海賊にまでなかなか手が回らないのです」(インドネシア海軍西艦隊インドロコス司令官)