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「現地のそのへんの人聞を大勢連れてきて、ボートに乗せて、下からローラーブラシで塗る。ザーッとやると20〜30人ぐらいいてやれば1日もかからないかもわかりませんね。これだけ塗るのに」

(日本海難防止協会・池上武男参与)

【そして塗り替えられたアロンドラレインボー号はインド洋へ。ムンバイ沖で拿捕された時、西に航路をとっていた。残り4000トンのアルミを積んで一体どこへ行こうとしていたのか。ロンドンに本部を置くIMB(国際海事局)。世界の商工会議所が設立した情報収集機関で、世界中の海賊情報はここに集められる。】

「わわれはアロンドラレインボー号がアフリカのソマリアに向かっていたと推定しています。ソマリアは無政府状態で様々な密輸が行なわれてきたからです。海賊たちは輸送経路から売り先まで周到に準備していたのだと思います」 (国際海事局・ジャヤンド・アビヤンカ副局長)

【周到な準備をしていたという海賊たちは一体どのようにアロンドラレインボー号の出航日時や航路を調べたのだろう。私たちはアロンドラレインボー号が出航したインドネシア、クアラタンジュン港に向かった。すると意外なことに港はアルミ鋳造工場の中にあった。(INALUMインドネシア・アサハンアルミニウム会社)ここは日本とインドネシアの合弁企業で生産されたアルミの6割が日本向けだ。】

「レインボー号が海賊にあったと聞き驚きました。この辺の海は安全でしたから」(INALUMハリー・ヌブロホ港湾主任)

【クアラタンジュン港は工場専用の港で出航する船には必ずアルミが積んである。海賊たちは最初からこの港にねらいをつけていたのだ。だが、この港はあまりに見晴らしがいい。近くに船を止めればすぐに怪しまれてしまう。海賊たちは一体どのように港を監視し、出航予定を知ったのか。】

「私たちの調査によれば海賊のひとりが事前に侵入し、アロンドラレインボー号の船内のどこかに隠れて、情報を司令船に送っていたようです」(国際海事局 ジャヤンド・アビヤンカ副局長)

【犯人たちの調書によればアロンドラレインボー号がクワラタンジュン港に到着した10月17日に海賊の司令船は800キロ離れたバタム島を出航し、現場海域に近づいた。そして22日夜半、船員たちが眠りに入ったのを見計って、船内の海賊は襲撃の合図を送った。一方日本の運行会社(東京船舶(東京丸の内))が異変に気づいたのは週明けの25日。海上保安庁など、関連機関に連絡したのが27日。ところが同じ27日、不可解な情報が運航会杜に入る。】

「10月27日にある船からアロンドラレインボー号からエンジン機関故障であるという情報が入りまして」(東京船舶担当者)

【ところが船を出して調べてみるとエンジン故障の事実はどこにもない。】

「つまりは全くの偽情報だったと」(島)

「ということになります」(東京船舶担当者)

「なるほど」(島)

【実は捜索を開始した海上保安庁もデマ情報で惑わされていた。(海上保安庁は捜査のため巡視艇と哨戒機を現地に派遣)海賊の仕業なのか。】

「海賊にあったらしいという情報で、先ほどの捜索の巡視船を派遣したんですけれども、その後もあちらにいるんじゃないか、こちらかも知れないという情報が入って、他に情報がないという状況ですので、もしかと思って、あらぬ方向へ捜査を展開したという結果になりましたですけれども」

(海上保安庁 荒井正吾長官)

【海賊たちは日本側や国際海事局の動きを正確に読んで、攪乱していたのだ。】【東京虎ノ門にある日本財団は世界から寄せられる情報をもとに海賊事件のデータベースをつくっている。

 

 

 

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