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島 [アロンドラレインボー号の甲板上で]この下にまだアルミニウムインゴットが4000トン積まれているそうです。

【その海賊たちの獲物がアルミだ。レインボー号には7000トン、時価にしておよそ11億円のアルミインゴットが積まれていた(船内に残されたアルミインゴット)。アルミは自動車の部品など用途が広く値段も高い。インドで拿捕されたときには7000トンのうち3000トンがどこかに消えていた。

救助されたアロンドラレインボー号の池野[功]船長と小川[健三]機関長の証言。そして逮捕されたか海賊の自供から事件の経過を追ってみる。

去年10月22日、午後8時10分、アロンドラレインボー号はインドネシアスマトラ島東部、クアラタンジュン港を日本に向け出航。その2時間後、】

「そこは別に危険なところではなかったから、当直の航海士に任せてちょっと下に降りて、出航の電波のテレックスをノートに書いていたんですけれどもね。その時に上で異常な音がしたり、何か叫び声が闘こえたりというので」(池野船長)

【海賊たちはスピードボートで船尾に近づきロープをかけてよじ登ると、外の階段を上って操舵室へ向かった。】

島 [アロンドラレインボー号の操舵室で]海賊は最初、この右手のドアから侵入しようとしたようですが、船員たちが鍵をかけたため、左手の反対側のドアから侵入しました。そして、操舵室に入った海賊たちは船長室に入ろうとして、ここで池野船長ともみ合います。

【異様な物音を聞きつけた池野船長は操舵室への階段を昇った。その時ドアのむこうに海賊がいた。】

「隙間をあけておいて、押し合いというような状態になったんです。見たら、ドアの陰からピストルだとかナイフが出てきたから、もうその時にすでに海賊だ、これは押し合いをやっていたって勝ち目はないということで」(池野船長)

【海賊たちは船室のドアの一つひとつこじ開け、船員たちを一箇所に集めた。】

「バッと、抱え込まれてね、両脇を抱え込まれて、すぐ下の食堂へ連れて行かわたんです。そうしたら下の食堂へ入るのにみんな捕まって、目隠しされておったですよね、縛られて」(小川健三機関長)

島 襲撃のあと、海賊の司令船は今現在のタグボートのようにアロンドラレインボー号に接岸し、こんどは新たに15名の操舵要員が乗り移ってきます。その中には総重量7000トンのレインボー号を操舵できるメンバーが含まれていたといいます。

【古ぼけた輸送船。それが司令船サンホーだった。池野船長たちはアロンドラレインボー号から司令船に移され、狭い船倉に六日間監禁される。そして10月29日未明、アロンドラレインボー号に積み込まれていたゴム製の救命ボートに移され、ロープを切られる。11日間の漂流の始まりだ。】

「ともかく気力なんだと。がっかりして、もう駄目だと思ったら死んじまうんだぞと」(池野船長)

【漂流中、目の前を何隻もの船が通過する。だが信号に応えてくれない(11月2日「船そばを通るも返事なし」)。池野船長らは逆に海賊と疑われていたのか(11月5日「2隻の船が通るが返事なし」)

一方司令船と分かれたアロンドラレインボー号は10月26日、マレーシアのミリに入港。海賊たちは3000トンのアルミインゴットを輸送船バンスーン2号に移し、アロンドラレインボー号の船体を塗り替えた。船体の色を変えるのにどれくらい手間がかかるのか専門家に聞いた。】

 

 

 

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