日本船を襲うこの海賊ですけれども、正体と、その被害急増の裏側を取材しました。
宮田佳代子アナウンサー 取材は島ディレクターです。よろしくお願いします。
島田アナ 島さん、海賊と言いますと、何か小説や映画の世界だと思っていますけれども、今どれぐらい被害があるんですか。
島直紀ディレクター このボード[海賊被害を示す地図]を見ていただきたいんですけれども、去年から今年にかけて、日本船だけで32件の事件が起きています。その7割以上、実に23件が東南アジアに集中しています。世界の船で見ると、去年一年間だけで158件、158隻の船がこの東南アジアで海賊に襲われているわけです。世界で最も海賊が多発する地帯だと言えます。
私たちは去年の秋に起きました、日本の船員が乗っていた輸送船なんですけれども、アロンドラレインボー号という船に注目し、海賊の追跡を始めました。
島田アナ はい。これはニュースなどで皆さんご存じだと思いますけれども、船員たちが救命ボートに乗せられて漂流していたという、船ごと。海賊というと、荷物だけ奪うイメージがあるんですけれども、船ごと奪ってしまっています。その海賊に襲われた船ですね。日本船の中を日本のメディアでは初めて撮影することができました。スクープ映像を交えてご覧ください。
<ビデオ>
【今年2月一隻の貨物船がシンガポールに曳航された。去年10月海賊に襲われ、船ごと積荷を奪われた、愛媛県井村汽船所有の輸送船、アロンドラレインボー号だ。全長113メートル、総重量7000トンの輸送船が乗っ取られたのだ。海賊に奪われた船はインド海軍によって砲撃され拿捕された。】
島 ここが操舵室ですね。かなりひどく壁が破れています(インド海軍の砲撃で窓ガラスが割れている)。大砲を仕込んだあとです(砲弾が貫通した穴)。ひどい壊れ方です。相当激しい攻撃だったようです。
【海賊たちは砲撃を浴びながらも船に火をつけ(海賊が放火した跡)、船内に海水を注入する。命がけで船を沈め証拠の隠滅を図ったのだ。アロンドラレインボー号が消息を絶ったのは去年10月22日。インドネシアのクアラタンジュン港を出航した直後だった。船会社や海上保安庁の捜索にもかかわらず行方は杳として知れない。
ところが18日後の11月9日、出航した港から550キロ離れたタイのプロケット沖で池野船長と小川機関長、日本人2名を含む17人の乗組員が漂流中を救助された。】
「あと三日、四日すると水、食糧ともなくなるなというような、もうかなり終わりの状況にはあった。せっぱ詰まっていたですね」(池野船長)
【さらにその8日後、今度はインド、ムンバイ沖を航行中のレインボー号らしき船をインドの沿岸警備隊と海軍が発見。この時船は警備艇の停船命令を無視し、四日間にわたって逃亡したが、砲撃を受け、ようやく停止。船に乗り組んでいた15人は全員逮捕された。アロンドラレインボー号の青い船体は黒く塗られ、船名も変えられていたが、船内の刻印が確認の決めてとなった。大規模な海賊事件が発覚した。】
島 [マラッカ海峡で]ここはインドネシアとマレーシアの間にあるマラッカ海峡です。一日に800隻以上の船が通航しています。ちょうど、このマラッカ海峡にさしかかったところで、アロンドラレインボー号は海賊たちにおそわれました。
【インド洋から太平洋に通じる海の大動脈マラッカ海峡は、また、海賊事件が多発する危険水域だ。最も狭い場所では幅わずか21キロ。しかも浅く、どの船も速度を極力抑え、海賊にとって襲うには絶好の場所なのだ。アロンドラレインボー号も、このマラッカ海峡で被害にあった。】