別図第3は1997年と1998年における海賊の出現状況をプロットしたものであるが、監視の行き届かない海域においては、僅かな小火器で武装した海賊によるこの様な活動が野放し状態になっているのが現状である。
最近では、海賊の組織化・凶悪化が進み、積み荷諸共船ごと乗っ取るという大掛りな事件も発生しており、このまま放置すれば、乗組員を不安に陥れ、積み荷に対する保険料も高騰する等、海運業務に大きな影響を与えることになる。
本年(2000年)3月上旬、アジア諸国14か国・地域の海上警備担当者による対策会議がシンガポールで開催され、4月には小渕首相の提唱で、アジア地域の海上保安庁長官レベルの警備担当者が参加する海賊対策会議が東京で開かれることになっているが、OPKを含む抜本的な対策が望まれる。(海賊の実態の詳細については、川村純彦氏の「21世紀型海賊」草思社2000年3月号を参照)
一方的な宣言による制約と云うのは、例えば公海における一方的な演習危険海域の設定とか、漁業水域や経済水域における自由航行を制限する一方的な宣言がなされた場合の制約を意味する。
最近国連海洋法条約に関連して、沿岸諸国の、資源活用や環境保護を巡る要求が拡大し、公海における自由航行に何らかの制約を加えようとする動きがあることは、誠に憂れうべき傾向である。
我々が海洋から受ける恩恵は、大きく分けて二つに区分出来る。
その一つは豊富な資源の宝庫としての恵みであり、漁業資源や様々な鉱物資源、将来的にはエネルギー資源としての活用も考えられる。
もう一つは地球表面の70.8%を占める縦横無尽の大容量交通網(シーレーン)としての恵みであり、世界経済の根幹をなす物流を支え、その安全と、地域の安定に寄与する軍事力の迅速な展開を可能にする機能として極めて重要な役割を果たしていることは、これまでに縷々述べてきたとおりである。
特にアジア太平洋地域において、安全と安定を維持するためには、中核となる米軍事力が、何時でも何処にでも展開出来るフリーハンドを維持することが何よりも大切であり、これを担保するのがシーレーンの自由航行の確保である。米軍が迅速に展開できる可能性を保持することにより、物流を支える機能も確保され、地域の安定した経済発展が維持出来るのである。