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有事における国家安全保障の観点から、社会保険料の軽減・所得税の減免・船員訓練費補助といった措置により自国籍船の確保に務める動きも出て来ているが、全般ととして域内海運のボーダレス化は免れ難い傾向として益々進むものと考えらる。

海運業務のボーダレス化・空洞化の進展に伴い、船舶運航の形態も益々多国籍化する傾向にある。

 

別図第1は、ある典型的な船舶運航形態の一例を示したものであり、ある日本の船会社が運航する鉱石兼石炭運搬船の例である。

親会社は日本、登録船主と船籍はパナマ、保険はイギリス、乗組員はインド・フィリピン・中国人、荷主はオーストラリアと日本、就航航路は日本・オーストラリア・欧州・ブラジルと云う形態である。

この様な形態は極一般的であり、今後この傾向は益々進展するものと思われる。

 

更に企業のボーダレス化に伴い、海運荷動きのルートも極めて複雑に入り組んだものとなって来ている。従来の様に原材料を生産地から工業国に運び、製品にして消費国に輸出すると云った単純なルートではなく、夫々異なった工場で製品化された部品を更に他の組立工場に運び、出来上がった製品を消費地に送ると云った複雑な荷動きが主流となりつつある。

 

別図第2は、あるコンピューターが出来上がる迄の部品・構成品の流れを示したものである。

IC生産は韓国・日本・アメリカ、シャーシー部品生産はアメリカ、コンデンサー・トランス等の生産とCD-ROM組立は日本、電源部組立とレジスター・コンデンサー・ケーブル等の生産は中国、ハードデイスクドライブ組立と冷却用ファンの生産はタイ、フロッピーディスクドライブの組立はマレーシア、プリント基盤の組立と完成品の組立はシンガポールで行なわれている。そして此等の完成品はシンガポールから消費地に向けて輸送される事になるわけである。

これは極めて典型的な例であるが、自動車を始めあらゆる工業製品や食糧加工等も多かれ少なかれ此の様な形態に移行しつつある事は紛れもない事実である。

 

前項で述べた様に海上荷動き量は年々増大の一途を辿り、その輸送形態は海運のボーダレス化・荷動きルートの複雑化に伴い、益々地域国家間の有機的な結びつきを強めるものとなってきている。

 

 

 

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