アジア太平洋域内におけるデータを入手出来なかったが、日本やアメリカもほぼ同じような割合であり、地域内においてもほぼ同様のシェアーで推移しているものと考えられる。
半導体・事務用機器・精密機器・医薬品・非鉄金属・ダイヤモンド製品・グルメ生鮮品といった高付加価値の軽量物資が航空輸送されることから、貿易金額としては、日本の場合全体の30%近くに達するというデータもあるが、前章にも述べた通りこれら高付加価値の物流を活性化させるためには、各国の生存を支える大容量海上輸送が確保され、戦略的な地域の安定が確保されていることが大前提となることを忘れてはならない。
(2) 海運業務のボーダレス化
最近資本投資の拡大に伴い、企業のボーダレス化が進んでいることは周知のとおりであるが、海運業界といえどもその影響を免れることは出来ない。
1996年に国境を越えて行なわれた二大船会社P&Oとネドロイドの合併に見られる様に、海運業界のボーダレス化が進行する時代に入っている。
別表第4は1993年から1998年の5年間に世界の国別船舶保有量がどの様に変化したかを示したものである。細部については別表第5〜6に示す通りであるが、この5年間の上位5カ国の変化に注目する必要がある。
1998年の上位5カ国の保有する船腹量の合計は全体の44.3%(1993年は41.1%であった)に達しているが、注目すべきことはこれらの国の保有する船腹の殆どが便宜置籍船であると云うことである。
この現象は、低コスト競争力を有する発展途上の船会社との競争に耐えるため、従来の大手船会社が、税負担・船員費・一般管理費のコストを削減するために、負担の軽い国に船籍をシフトし、便宜上外国船籍として人件費の安い外国の船員によって運航するという形態が増加していることによるものであり、海運業界の空洞化が進んでいることを意味している。
このため各国の貿易荷動きの自国籍船による積取比率は年々著しく低下し、海運のボーダレス化は益々進む傾向にある。
例えば日本の場合、1997年の自国籍船による積取比率は、輸出で1.9%、輸入で16.5%となっている。因みに1970年は輸出38.6%、輸入44.5%であった。