高付加価値の物流を促進するための資本投資を活性化させるためには地域の貿易秩序の安定維持が必須の条件である。そのためには生存を支える大量輸送の安定確保と・地域の戦略的安定維持が基盤的要素として不可欠の要件であり、これを確保する為には、軍事力の迅速な展開と物流を可能にする域内シーレーンの安定的活用が基本要件として益々その重要性を増すことになる。
何れにしてもアジア太平洋国家群の21世紀の生存と繁栄を支えるために、シーレーンは益々その重要性を増すばかりである。
今やシーレーンは一国あるいは一勢力が占有する時代ではなく、相互の信頼を基盤とした共同管理を必要とし、相互に発展する国家群が如何にしてこれを安全且安定的に共有し活用するかが重要な課題となる時代に移ってきている。
3 シーレーンの現状
(1) 海運荷動きの推移
ここ数年間の世界の主要貨物品海上貿易量の推移を見てみると、別表第1に示すとうりである。その総量は年々増加する傾向にあり、1997年には総量約51億トンに達している。
最近のデータは未整理ではあるが、これまでの推移からすると更にその量は増大しているものと推測される。
別表第2はアジア太平洋地域の主要貨物別海上貿易量の推移を示したものである。
石油製品及びその他の物資についてはアジア太平洋地域分を直接集計することが困難であり、特殊な手法を用いて世界貿易量の推移から一部推計したものを含むが、概ねこの様な傾向で推移しているものと考えられる。
1997年には16億トンを超えており、現状では地域内の海上貿易量は世界の海上貿易量の1/3近くに達しているものと考えられる。
別表第3は世界の海上輸送量と航空輸送量の推移を示したものであるが、最近航空機の発達により航空輸送量が増加したとは云え、量的には海上輸送量の0.3%程度にしかすぎない。