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以来世界の列強はシーレーンの活用を目指して「人・物」の交流を確保する爲の商船隊と、これを護る爲に制海を確保し軍事力の迅速な展開を可能とする海軍力の育成に務め、海洋制覇の権を競ってきたことは周知のとおりである。

 

人類が海洋に期待するところは「シーレーンとしての機能」と「豊富な資源」にあることは今も昔も変わりはないが、科学技術の発達と経済活動の発展により、その意義は大きな変革を見せてきている。

 

海洋資源については、漁業資源から鉱物資源へと活用範囲が拡大し、各国の利権を巡って新たな問題が生起していることは周知のとおりである。しかし国連海洋法条約の発効により、種々解決すべき問題を含みながらも秩序ある活用の方向に進みつつあることも事実である。

 

シーレーンに期待するところは、従来「人・物の交流」と「軍事力の迅速な展開」並びに「情報通信連絡」を可能とする機能にあったことは前述のとおりである。

このうち、「情報通信連絡」と「人の交流」については、エレクトロニクスと航空技術の飛躍的な発達により必ずしもシーレーンを必要としなくなっており、従来の意義を失ったと云える。

しかし「軍事力の迅速な展開」を可能とする機能と「物の交流」を支える機能については、従来と変わること無くシーレーンに期待するところ依然として大である。

 

「軍事力の迅速な展開」を可能にする機能については、域内の平和と安定の維持並びにシーレーンそのものの安定活用を支える、極めて重要な要素として、各国が海軍力を整備してその機能維持に腐心していることは周知のとおりである。

 

また「物の交流」を支える機能については、海を隔てての経済活動の活発化により、従来にも増して重要な位置を占めるに至っている。

第1次第2次世界大戦から朝鮮・ベトナム戦争に引き続き冷戦時代を経て、自由主義経済の飛躍的な発展に伴いアジア太平洋の各国は海洋を動脈網として域内外と接続し、相互に発展する分散海洋連帯国家群(土地を接することなく海を隔てて大遠距離に分布しながら、海洋を紐帯として有機的に連携する国家群)の様相を呈するに至っている。

 

現在の域内経済活動の実態は、エネルギー資源や食糧といった生存を支える必需物資の大量輸送の安定確保を基盤として、地域への資本投資による高付加価値の物流を醸成し、更なる繁栄を得ると云う形態に移行してきているが、この傾向は21世紀には益々大きくなることであろう。

 

 

 

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