第二十六条 指揮官ハ帝国ノ局外中立又ハ之ニ等シキ位置ニ在ルトキ其ノ軍艦ヲ以テ帝国船舶ヲ護送シ又ハ交戦国ノ臨検者ニ対シ事実ノ保証ヲ為スコトヲ得但シ事実ヲ抂ケテ之ヲ庇護スヘカラス
第二十七条 指揮官ハ外国ニ政治上ノ争乱アリテ之ニ関係ヲ有スル者危急ノ難ヲ避ケムカ為我艦ニ保護ヲ謂フトキハ之ヲ艦内ニ保護スルコトヲ得但シ之ヲ保護スルニ先チ成ルヘク其ノ地ニ駐在セル我外交官又ハ領事官ト協議スヘシ
前項ノ場合ニ於テ指揮官ハ其ノ保護スル所ノ者ヲシテ其ノ党ト一切ノ交通ヲ絶タシメ且速ニ之ヲ安全ノ地ニ移スヘシ而シテ之カ為ニ特ニ一方ヲ庇護スルコトノ嫌疑ヲ来ササルコトニ注意スヘシ
第二十八条 指揮官ハ外国ニ暴動アリテ其ノ国ニ在留スル我和親国ノ臣民其ノ生命ニ危害ヲ被ラムトシ其ノ国ノ軍艦碇泊セサルニ当リ相当ノ順序ヲ経テ我艦ニ保護ヲ謂フトキハ之ニ応スルコトヲ得但シ之カ保護ノ方法ハ我艦ヲ以テ其ノ避難所トナスカ又ハ我艦ノ船舟ヲ以テ之ヲ他所ニ避ケシムルコトニ限ルヘシ
第二十九条 指揮官ハ前二条ノ場合ニ於テ一旦保護ヲ与ヘタル後艦務ニ支障ヲ生スルカ又ハ保護ヲ要セサルコトヲ発見シタルトキハ随意ニ退出ヲ命スルコトヲ得
第三十条 指揮官ハ奴隷トシテ使役セラルル者其ノ覇絆ヲ脱シ我艦ノ庇護ヲ請フトキハ事情ノ許ス限リ之ニ応スヘシ
第三十一条 本令ニ於テ海賊ト称スルハ海洋ニ於テ左ニ掲クル二項ノ一ニ該ルヘキ行為アルモノヲ請フ
一 何レノ主権ニモ属セス又ハ何レノ主権者ヨリモ免許ヲ得スシテ暴行涼奪ヲ為スモノ
ニ 交戦国双方ヨリ特許状ヲ得テ捕獲ヲ為スモノ
第三十二条 指揮官海賊ヲ逮捕セハ之ヲ便宜ノ港ニ引致シテ海軍大臣ニ具申シ其ノ指令ニ依リテ之ヲ処分スヘシ但シ其ノ指令ヲ待ツ能ハサル場合ニ於テハ之ヲ其ノ地ノ相当ノ官庁ニ引渡スコトヲ得
第三十三条 外国領海ニ於テ海賊ヲ逮捕スルヲ得ヘキハ特別ノ条約アル場合ニ限ルヲ例トス
第三十四条 指揮官我外交官又ハ領事官ヨリ公ノ請求アル者ニ限リ自己ニ於テ差支ナシト認ムルトキハ海軍大臣又ハ所管長官ノ允許ヲ経スシテ之ヲソノ艦船ニ便乗セシムルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テハ其ノ都度之ヲ海軍大臣又ハ所管長官ニ報告スヘシ
我海軍軍人軍属ニシテ便乗ヲ請フ者アルトキハ外交官又ハ領事官ヲ経サル者ト誰モ之ヲ許可スルコトヲ得
第三十五条 指揮官外国官庁又ハ外国人ト紛争ヲ生シ其ノ事件ノ未タ落著セサルトキ他ニ出港セントセハ其ノ国ニ駐在セル我外交官又ハ領事官ニ其ノ事件ノ追跡ヲ委託スルコトヲ得
第三十六条 指揮官本令ニ拠リ事ヲ処理セントスルニ当テハ我艦ト同一ナル事情ノ下ニアル外国軍艦ト連合シテ事ニ従フ事ヲ得但シ外国軍艦ト連合スルハ彼我ノ臣民其ノ利害ヲ同クスルカ又ハ帝国外交官又ハ領事官ノ請求アリテ指揮官其ノ請求ヲ是認スル場合ニ限ルモノトス
第三十七条 指揮官ハ外国ニ生シタル重大ナル新事件及本令ニ拠リ処理セル必要ナル事項ハ悉之ヲ所管長官ヲ経テ海軍大臣ニ報告スヘシ但シ至急ヲ要スル件ハ所管長官ニ報告スルト同時ニ直ニ海軍大臣ニ報告スヘシ