しかし、軍艦が外国の領水(港内を含む内水、領海、群島水域)にある場合は、亡命者を受け入れる権利はない。但し、暴徒から追われる等避難してくる者の生命又は安全に急迫した危険が伴うような場合には、一時的に避難を認めることができる。
(5) 軍艦の礼遇享受
軍艦は国の威厳を表すものであり、主権に伴う尊敬と礼遇を受ける。これは国際間一般に確立した慣例と言ってよい。従って、礼式、礼砲、訪問等の欠礼又は不当な取り扱いに対しては、それの施行又は是正を求めることが出来る。
但し、これらは国際礼譲に基づき行われるものであり、慣習国際法の規則ではないので、これを強制し、又は不履行に対して復仇等の措置をとることは出来ない。
4. 平時の外国船舶対処
(1) 領海内の外国商船対処
国連海洋法条約は、沿岸国が無害通航に係わる法令を制定すること(第21条1項)と自国の領海内での外国船舶の無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとること(第25条1項)を認めている。それを受けて、沿岸国は外国商船の領海通航が無害ではない疑いがある場合には、その検認のために質問し、国旗の掲揚を要求し、更には停船させ、臨検を実施する。その結果で警告、退去を命じ、或いは当該国の国内法に違反していれば、船舶の拿捕、捜査、乗組員の逮捕等の措置がとられる。
(2) 領海内の外国軍艦対処
国連海洋法条約では領海を通航する外国軍艦が、領海通航に関する沿岸国の法令を遵守せず、また遵守の要請も無視した場合には、当該軍艦に対し、沿岸国は領海からの退去を要求することが出来る(第30条)。もしそうした退去要求に応じない場合でも、軍艦が有する主権免除のため、沿岸国は警察権を行使することは出来ない。当面は外交経路を通じて解決を図ることになる。
外国軍艦が、領海内で無害でない活動を行う場合も、先ずは領海外への退去を要求する。それでも退去に応じず沿岸国を害する活動を続けるような悪質な場合は、退去をさせるための必要な強制を加える。その手段は、警告のための威嚇射撃や相手が潜没潜水艦であれば警告のための発音弾や爆雷を投下する。