●受入国の法令を遵守する義務
軍艦が免除の特権を有することは、受入国の法令を遵守しなくともよいと言うことではない。軍艦は、受入国の入港、航行、衛生等に関する法律を遵守しなければならない。軍艦が受入国の関係諸規則に違反する行為があった場合、受入国は外交経路を通じて関係諸規則の遵守を求めるか、当該軍艦に退去を要求することができる。
●軍艦に対する検疫
軍艦は、受入国の検疫規則を遵守しなければならない。従って艦長は、軍事的必要性と安全確保の要求が許す限り、検査官に対し他の全ての援助を与え、また求められる全ての情報を提供しなければならない。その一方で艦長は、沿岸国の検査官が艦内に入って検査することに許可を与えないことが出来る。
●軍艦の納税免除
軍艦は、受入国に対し納税の義務はない。このため港税、頓税等の納入は免除される。また関税は、軍艦用物品には課税されない。しかし乗組員個人の所有物についてまでは及ばないので、それらを艦外に持ち出して、受入国が輸入する場合は課税される。
●労務提供等に対する支払い
軍艦といえども、特別設備の利用、労務の提供等に対しては代価を支払わなければならない。例えば、運河通航料、水先案内料等は支払う。
●上陸中の軍艦乗組員に対する司法権
軍艦の乗組員は、受入国の同意なしに上陸することはできない。同意なしに上陸した場合は、如何なる特権も認められない。
公用での上陸中に犯罪を犯した場合には、受入国の司法権から免除され、本国の司法権に従う。
公用外の上陸中に犯罪を犯した場合には、受入国の司法権に従わなければならない。もし当人がいったん帰艦した場合、艦長は受入国の引き渡し要求に応じる義務はない。
●外国人避難者の取り扱い
一般的には国家は、庇護を求める外国人(亡命者)を自国領域において受け入れる権利がある。従って、軍艦も自国領水において、彼らを受け入れることが出来る。また、軍艦が国際水域(公海及び排他的経済水域)にある場合も、同様に受け入れることが出来る。