その後多くの国々が、このトルーマン宣言に追随し、1958年には大陸棚条約が採択されるに及んで、大陸棚に対する沿岸国の権利についての異論は無くなったと言ってよい。
ただ、58年の大陸棚条約では、法的大陸棚の限界を水深200メートルまでとしたが、もう一つ別の基準として200メートルを越える開発可能限度を認めたことから、その後の開発技術の進歩と共に、法的大陸棚の限界が無限に広がっていく恐れが出てきた。
他方、法的大陸棚を越える深海底及びその資源を、人類の共同遺産にしようとの考え方が打ち出されるに及んで(1967年マルタ代表パルド大使の提案)、法的大陸棚の限界を一定限度に抑える必要性が生じてきた。こうした情勢から、第三次国連海洋法会議では、法的大陸棚の定義などを再検討して、新しい海洋法条約(第6部)の中に、大陸棚に関する規定を設けたのである。
国連海洋法条約による大陸棚の範囲は、領土の自然延長として、拡がる海底区域の海床及びその下で、大陸縁辺部の外側までとしているが、大陸縁辺部が領海基線から200海里に達しない場合には、200海里までが大陸棚となり、大陸縁辺部が200海里を越えている場合には、領海基線から350海里までの範囲か、又は2500メートル等深線から、100海里までの範囲でなければならないとしている(第76条)。
この大陸棚において沿岸国は、1]大陸棚の探査及びその天然資源(海底及びその下の鉱物その他の非生物資源、定着性の生物)の開発のための機能、2]大陸棚掘削に関する機能、3]海洋構築物に関する機能、4]海洋科学調査に関する機能を有しているが(第77条)、他方全ての国は、「航行の自由」「上空飛行の自由」「漁獲の自由」及び「海底電線及び海底パイプライン敷設の自由」を享受している。但し、大陸棚の範囲と、排他的経済水域の範囲とは重なる部分があるので、「漁獲の自由」については、排他的経済水域以遠の範囲に限定されることになる。
わが国はこれまで大陸棚に関する条約には、加盟していなかったが、今回の国連海洋法条約の批准に際し、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を併せて制定し、国内の体制も整備した。しかし、周辺諸国と大陸棚の範囲が重なる場合、境界の画定が必要になるが、先の排他的経済水域の項で述べたのと同じように、中間線ではなく「衡平な解決」による境界の画定を原則としているので、大陸棚の範囲に関する主張の違いがあれば、当然厄介な外交折衝を余儀なくされる。