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その他、沿岸国はこの排他的経済水域において、1]人工島、設備及び構築物の設置並びに利用、2]海洋の科学調査、3]海洋環境の保護及び保全に関する権利、管轄権及び義務も有している。

一方、排他的経済水域においては、全ての国が公海の自由のなかの「航行の自由」、「上空飛行の自由」、「海底電線及び海底パイプライン敷設の自由」を享受することが認められている。しかし、その他の公海の自由のなかの海洋構築物の建設、漁獲及び科学調査の自由については、沿岸国の主権的権利が認められているため、他国の権利は制限されている。特に、漁業については沿岸国の漁獲可能量に余剰があれば他国に漁獲を認めることになっており、かつ、その漁獲可能量の決定は沿岸国に委ねられていることから、極めて強い排他性を持っている。

このため、わが国においても国内法で排他的経済水域を設定し、漁業については、排他的経済水域内で外国漁船が操業する場合の許可制度や、水産資源の保存・管理のため同水域内での漁業を管理する制度などが定められたほか、海洋環境の保護・保全の分野でも、海洋汚染の防止に関する法令の適用が同水域にも拡大された。

ここで国連海洋法条約の重大な問題点の一つについて指摘しておきたい。つまり、この排他的経済水域(及び大陸棚)が2国以上の間で重複する場合、関係国の間で協議をして、境界線を画定しなければならない。領海が重複する場合には、先述した通り、中間線が基準となる。ところが、排他的経済水域(及び大陸棚)では中間線のような基準を設けず、互いに納得の得られるところに境界線を画定する、所謂「衡平な解決」を狙ったため、基準が暖昧になっている。

例えば、東シナ海におけるわが国と中国及び韓国との間の排他的経済水域(及び大陸棚)の境界線の画定は、お互いの主張の違いから、難しい外交折衝になっている。その上、竹島や尖閣諸島の領有権の問題が係わっているため、経済や資源問題のみならず、国の主権や安全保障の問題に波及する恐れが少なくないのである。

国連海洋法条約で創設した排他的経済水域は排他的漁業水域の色彩が強く、沿岸国の漁業を守り、かつ、漁業資源も保護しようとするものである。この条約が採択されてから、200海里水域を設定して漁業保護を目指す国が増えてきたが、条約の発効と共に、完全に200海里時代に入ったといえる。ところが、世界全体の漁獲量は、1990年を境に減少してきており、資源の枯渇が憂慮されている。

また、漁船の数は国連の報告によれば、90年には、漁業従事者1500万人、漁船の総トン数2300万トンに達し、これは主要な水産資源を枯渇させない適性規模の約2倍と言われている(NEWS WEEK 94.4.24)。

 

 

 

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