(6) 群島水域
群島で構成される群島国家の群島水域の制度は、国連海洋法条約に初めて規定された。島の集団の外周を直線で結び、島々とそれに隣接する海域を一体として捉えようとする「群島水域」の主張が出てきたのは1世紀以上も前に逆上るが、比較的最近に至るまで国際的な学会や会議での論議と若干の国の国内的措置に止まっていた。ところが第二次大戦以後、植民地からの独立による群島国家の増加と海洋支配の拡大傾向が群島主義の国際的承認への圧力を次第に強めてきた。
一方、大洋群島諸国の群島主義の採用は、経済的・戦略的に極めて重要な航路、例えばスンダ海峡・ロンボック海峡などを群島国家の水域内に取り込ませることになるので、海洋国の強い抵抗を招いた。
こうした情勢を背景にして、第三次国連海洋法会議では長い論争の末、第三国の利益を保持しつつ群島主義を承認すると言う妥協の制度を成立させたわけである。こうして国連海洋法条約では、群島水域の範囲を決める群島基線について詳細に規定するとともに、領海の幅はその基線から外側に設定する、即ち領海の内側に内水とは異なるこれまでに無かった新たな「群島水域」なるものを出現させたのである。
群島水域はその上空・海底及びその海底の地下まで含めて、その国の主権が及ぶことになるが、群島国家の主権は外国船舶の通航制度によって若干の制限を受けている。即ち第一に、船舶の無害通航を認めなければならない。この場合は一般的な領海における無害通航と同じく、通航の一時停止が認められる。
第二に、群島水域と隣接する領海内で「群島航路帯通航(第53条)」を認めなければならない。これは公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間に、群島航路帯及びその上空の航空路を設けて、国際海峡と同様の通過通航及び飛行を認めさせるものである。但し、この群島航路帯は群島国家側が設定する権利を有している。
群島国家として群島水域を有する代表的な国はインドネシアである。
(7) 接続水域
接続水域の考え方は古くからあり、18世紀以来若干の国が領海の限界を越えて外国船舶に対し、関税・衛生等の分野で規制を行うようになった。これに対し、公海自由の原則を侵すものであるとの反論が出てきたことから、公海自由の原則の希薄化を避けるため、領海を越えてのこうした制度は、基線から一定の距離(幅)を越えて行使されるべきではない、との考え方が大勢を占めるようになった。