1958年の公海に関する条約は、また、各国は、上記の措置を執るにあたり、「般に受諾されている国際的基準に従うものとし、また、この基準を確保するために必要な手段を執るものとする」と規定している。
この「一般に受諾されている国際的基準」こそが、衝突する政治的利害を調停する鍵であり、それゆえ、以下にこの問題について検討していきたい。
1958年のジュネーブ海洋法条約の一つでもある領海及び接続水域に関する条約は、「すべての国の船舶は、領海において無害通航権を有している」と規定している。通航は「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる」のである。
沿岸国は領海の無害通航を妨害してはならないが、無害でない通航を防止するため、その領域内において必要な措置を執ることができる。
無害通航権を行使する船舶は、沿岸国が制定した法令、特に運送及び航行に関する法令に従わなければならない。
海洋法に関する国際連合条約
1982年の国連海洋法条約は、義務に関してさらに詳しく規定している。第七部で公海について定め、第94条(旗国の義務)において、1958年の公海に関する条約の規定について、次のことを確保するために必要な措置を含むとして、以下のとおり規定している。
(a) 船舶が、登録の前に及び登録の後は適当な期間ごとに、資格のある船舶検査員による検査を受けるたびごと並びに船舶の安全な航行のために適当な海図、航海用刊行物並びに航行設備及び航行器具を船上に保持すること。
(b) 船舶が、特に、船舶操縦技能、航行、通信及び機関について適当な資格を有する船長及び職員の管理の下にあること並びに乗組員の資格及び人数が船舶の形式、大きさ、機関及び設備に照らして適当であること。
(c) 船長、職員及び適当な限度において乗組員が海上における人命の安全、衝突の予防、海上汚染の防止、軽減及び規則並びに無線通信の維持に関して適用のある国際規則に十分に精通しており、かつ、これらの規則の遵守を要求されていること。
以上の規定は、各国が望んで合意したものではないが、こうした問題が海洋法の根本であることを宣言したものである。
領海における無害通航の問題に関して国連海洋法条約は、航行の安全、海上交通の規制、沿岸国の環境の保全など、沿岸国が制定すべき法令について規定している。