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この際、国際海洋法裁判所での争点となることも考慮して、写真撮影等、証拠として事実を証明し得る手段が必要である。海賊や不審船舶、密入国、遭難等に関する情報も併せ収集し得るであろう。

本活動は、あくまで警戒・調査活動であり、武力の行使を伴う措置は含まない。違反や論争は、基本的には国連海洋法条約の規定に従い、国際海洋法裁判所等に送付される。

 

(実施の根提及び実施部隊)

本活動は、地域的な取極、合意、あるいは了解に基づき実施されるものとなる。

実施に当たる部隊は、地域的取極等による要請を受けて派出された戦力によって組織されることになる。海上警察力と海上防衛力との共同が基本となる。これは、各国の国家管轄水域を横断する活動が前提となることから、海上防衛力の方が適当と思われること及び、違法操業等を発見した場合はその場において海上警察力によって措置すること(「早期警戒・事実調査」とは異なる行動の事態として対応)が必要となるからである。

旧ユーゴスラビアに対する「海上阻止行動」では、アメリカ海軍やイタリア海軍が常時、コーストガード等の海上警察機関から派出された隊員を参加艦艇に同乗させ、警察的任務の必要な事態に備えると共に、その専門的知識・技能の活用を図り効果を上げていた。「海上阻止行動」は、OPKとは異なる行動であるが、示唆するものを含んでいる。また、本活動のような海洋資源・環境の保護を目的とするものではないが、アメリカでは、麻薬の搬入阻止や違法入国を取り締まるために、コーストガードと海軍の共同任務部隊、“Joint Inter-Agency Task Force”を編成し任務に当たらせている。

警察的任務、軍事的任務といった縦割り的な考えにとらわれることのない、柔軟な思考が求められる。

本活動では、水上艦船及び航空機といった現場戦力に限らず、海上防衛力の有する指揮・通信機能、情報収集・処理・表示機能の最大限の活用が図られるべきであろう。また、排他的経済水域等を有しているものの、本活動に派出し得る艦船や航空機を所有しない国がある場合には、そのような国に対して、国連海洋法条約の協力の原則に則って、余剰の兵力を有する国が代わって派出する制度も必要である。

 

(信頼性と透明性)

担当海域を設定して実施する方法、担当期間を設けて実施する方法等、各種のやりかたが考えられるが、いずれにせよ、信頼性と透明性が重要である。そのための措置として、乗員の相互乗込制度(Boarding Exchange)が考えられる。これは、例えば、A国の艦船(航空機)にB、C国からも乗員が同時に乗り込み、B国の艦船(航空機)にはC、A国から乗員が同乗するといったものである。

 

 

 

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