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これについての解決方法としては、新しい解釈を導入するやり方もあるだろう。大内先生はイノセント・パッセージとフリー・パッセージのあいだの中間的存在を新たに発明しないと、UNCLOSのレジームではプルトニウム船の通行を説明できないという指摘がありました。大内先生は「日本の新聞では、プルトニウムの輸送には反対だけれど、何を代替エネルギーとすべきかが議論されていない。われわれが直面している問題は、どこかの国のEEZを通らなければならないけれど、どうしたらいいのかということです」とおっしゃっていました。その議論についても大内先生から詳しい話をヒアリングしてみたいと思います。8

 

15:今後の課題と補足:2004年の国際海洋法改訂にむけての準備

 

今後の課題ですが、次のターゲットは国際海洋法条約の改訂が予定される5年後の2004年です。それに向けて、今回できました人脈を育てていきながら討論を続けていく必要があると思いました。今回インドネシア外務省条約局の人が参加されました。いまインドネシアは政治的に変わりつつありますが、インドネシアの海洋に対する考え方をドラフトの形でまとめてプレゼンテーションして見せたわけです。何か決めるということは他の国のも影響するわけですから、こういうセカンドトラックの場を通じて、予め自分たちの考えをお披露目して、相手の意見を聴取する。まさにこの国際海洋法の問題は、セカンドトラックに最も馴染む討論のテーマだと思いました。これを20年間やってきたSEAPOLのネットワークと協力しながら、日本がさらに大きな役割を果たしていく必要があるだろうというのが今回の会議の結論でした。

あとは雑感ですが、アジアの諸国、インドネシア、タイ、フィリピンなどから会議のコーヒーブレイクやディナーの場で言われたことですが、アジアの経済危機以来、やはり日本が頼りになることがはっきりわかったと言われました。頼りになるのは日本だけだ、日本にもっと頑張って欲しい、日本がもっとものをはっきり言って欲しい、という声が寄せられました。

同時に、過去20年、30年、日本政府がアジア各国の若い学生に対して行なってきた様々な留学プログラムの種が、そろそろ刈り取りの頃に来ているのかなという気がしました。例えばフィリピンの外務省であっても、局長・課長クラスはかつて日本で勉強した人々、あるいは勉強は米国などですませたが、その後、日本に研究員として半年生活したというような知日派です。大学やNGOにも日本で暮らしたことのある幹部が増えています。こうした人達の知識は本やマスコミを通じた2次情報ではないので、日本に対する理解には非常に深いものがあります。「中国は日本の軍国主義の台頭を懸念するといっているが、いまの日本人は昔のようなことは絶対にしませんよ。むしろこわいのは中国ですよ」という言い方を何度も聞きました。

経済的にアジアの経済危機以降、日本の経済力に注目が集まっていること以上に、彼らが強調したのは、戦争の話は自分たちが生まれる前の話だし、50年間に時代は変わっているんだということです。なぜ日本がそれに気がつかないのかという声が数多く寄せられたことを報告いたします。<以上>

 

8第9章の大内和臣先生の講演、第2章のシンポジウムの大内先生の発言参照

 

 

 

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