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13:UNCLOS成立の経緯

 

今回台湾から参加したジョン・チャオ教授(John Chao)は、さきほど述べましたようにペーパーは何も用意してきませんでしたが、演壇に立つと立て板に水で、海洋法の問題を話しました。世界的な権威だそうです。どうして現在、無害通航の問題が生じているのかを非常にわかりやすく、歴史的な経緯を説きながら話してくれました。

 

14:大内教授が提起した日本のプルトニウム輸送の問題

 

川村 この会議では、日本から出席された中央大学の大内和臣教授が、処理済みプルトニウム燃料の輸送問題という非常に重要な問題提起をされました。

日本は、ついこの間ヨーロッパからの輸送をすませたばかりですが、現在沿岸国のあいだには、領海だけではなくて、200カイリの排他的経済水域や、接続水域において、危険物を積んだ船として核燃料を輸送する船の通行に対して制限を加えよう、あるいは拒否するという考えを表明することがある。日本は、ヨーロッパから日本に通る航路を確保できないような状況になりつつある。そういう大変な状況にあるということを問題提起されました。

先生はメモ“Passage Through Exclusive Economic Zone;Should It Be Free or Innocent.”を配布されて、議論されました。

これについて、大内先生は、少なくとももうしばらくはこの問題について状況を見る必要があるというご意見でした。というのは、せっかく十数年以上かけて作りあげたUNCLOSは長い間をかけての各国の意見の妥協の産物ですが、これはまだ一人前になりかけたところである。そのような状況であるのに、またまた新しい問題を条約の中に入れようとする動きががあるが、これは適当とは思われない、という発言でした。

私は以前に同様の発言を韓国のソウル大学教授で国際法の権威のペイク博士が1997年秋のCSCAP会議で発言したのを覚えております。あのときは、ニュージーランドから先鋭な意見が提案されたのですが、ペイク博士は大内先生と同じ意見であったと記憶しております。

沿岸国の「過剰要求」については、J.Roach and R.Smith,“Excessive Maritime Claims,”U.S. Naval War College International Law Studies Vol.66(1994)、pp.145-148.という論文もあるそうで、UNCLOSを作りあげてきた人たちには、拡大する沿岸諸国の要求について、もっと慎重にやるべきだという意見が潜在的にあるようです。

 

大内先生はそういう問題を披露して、日本の窮状を皆さんに訴えたということで意味があったと思います。この点は後日、岡崎研究所・国際経済政策調査会でも時間を設けて、是非大内先生をお招きして、この辺の問題を討議するチャンスを作っていただきたいと思います。

 

小川 大内先生が使われたスライドには世界各国の排他的経済水域(EEZ)をプロットされていましたが、イギリス、フランスから日本に来るプルトニウム船はどこかの国のEEZを通らなければ日本に来られない。こういう厳然たる事実がある。

 

 

 

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