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特にマラッカ海峡は水深が非常に浅く危険ですから、中央部で航路帯を仕切り、そこでは厳格な右側通行のルールが課せられています。大型タンカーや大型船が続々通りますが、水深が浅くて狭いためスピードも制限されている。そういう場所ですので、規則をしっかり守らなければ事故が起きます。その規則を守らせるための処置が是非とも必要ですが、「これは沿岸国だけの責任ではない」とインドネシアのジャラール博士も言っていましたが、まさにその通りです。

このことに関して、日本があらゆる国に先駆けて援助のモデルになってくれているのは嬉しいことですね。これは日本財団の最大の功績だろうと私は思います。これは日本の船舶の安全のためだけではなくて、世界のために役立っていただいているという認識を会議の参加者に持ってもらえたと思います。

 

小川 そのジャラール氏が、会議二日目の午前中に言ったのは、「安全性を高めるためのCollective Managementが必要だ」ということでした。

彼いわく、二年前でしたか、シンガポールで会議をやった。その会議をやる根拠が何であったかというと、国際海洋法条約の第43条に諸国が協力して航路の安全や環境を守らなければいけないとある。シンガポール会議で各国の法律専門家は理解を深めたが、一向に関係諸国が動かない。彼は「日本以外は何もしていないじゃないか」とはっきり言っておりました。そして、参加者の顔をいちいち見ながら、「台湾は何もしていないぞ」、「中国も何もしていないな」、「アメリカも何もしていない」と名指しで非難しましたので、その都度関係諸国の人たちはうつむいておりました。

ジャラール氏によれば、日本が援助した金額は年間3億円で、1969、70年頃からやっていますから、30年間で約100億円になるとのことでした。エクソンのバルディーズ号の事故の損害はその30倍にもなった。どうして先のことを考えないのかと怒っておりました。この問題については昔からの論客ですので、感情を込めながら説明されておりました。

そして、怒っていたかと思うと急に国際法の学者の顔になりまして、「今後、これをやる場合には、ふたつの選択肢がある」と言うのです。

第一はオブリガトリー・アプローチ、第二はボランタリー・アプローチだそうです。

第一のオブリガトリー・アプローチあるいはオブリガトリー・メカニズムというのは、通行料を取るということです。ただ彼はそれよりも、第二のやり方であるボランタリー・アプローチを推奨していました。それは関係諸国が日本のように健全な常識を持っていればすむことだ。日本は過去30年もマラッカ・カウンシルを通じて協力しているではないか。とにかく43条の精神に従ってやってくれている。マレーシアでも、日本以外の国が何もしないことに対して怒っているようですが、そろそろ他の国々も日本を見習ったらいいのではないかという意見でありました。

 

 

 

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