7:UNCLOS(国連海洋法条約)の無害航行の状況について
条約本文とそれに基づく各国の態度等については、ダグラス・ジョンストンの包括的なペーパーと、日本の吉田三佐の事実関係を淡々と述べたペーパーが注目されました。2つのペーパーは似通っているのですが、無害航行に関する歴史的な事実を調べる上で参考となるペーパーですので、これは是非翻訳して皆さんに紹介する必要があると思います。Douglas M.Johnston,“Innocent Passage:Treaty Text and Subsequent State Practice.”Yasuyuki Yoshida,“The LOSC Innocent Passage Provisions for Warships:Text and Subsequent State Practice.”
8:軍艦の無害航行に関する認識について
この話題は、これまでも何回も繰り返されているんですが、今回の会議でアメリカの第七艦隊から参加したクロフォード(Jim Crawford)中佐(弁護士)のペーパーは、アメリカの公式な見解を理解する上で参考になるかと思います。
9:環境問題について
IMO(国際海事局)代表して参加したバーナード(Stella Regina Bernad)(女性)のペーパーは、船舶による海洋汚染をいかに防止するかに関するOHPプレゼンテーションをそのまま冊子にまとめた物ですが、これは中味が多岐にわたっているが良く整理された発表でとてもわかりやすかった。どういう問題が存在するのかを理解する上で非常に役に立つ発表だったと思います。“Impact of Marine Environment Protection on Maritime Traffic Management”
10:国際海峡の航行に関して
この話題も過去に何度も繰り返されていたものです。国際海峡の航行に関して何が問題であり、現在の各国の対応はいかなるものか。これに関しては、オーストラリアの地理学者ヴィヴィアン・フォーブス(Vivian Forbes)がペーパーを提出しました。本人が会議に参加できず、フランシス・ライ博士が代読したもので、質疑応答はできませんでしたが、非常に良くまとまっていました。“International Straits in Southeast Asia: Dichotomy Between Transit Right and Safety of Navigation.”
それから台湾のチャオ(John Chao)博士の発表は中味としては面白い発言でした。この人は40代でケンブリッジの卒業生で、会議のあいだ中、常にプロヴォカティブに質問したり意見を述べるという活発な学者で、自分の発表の際も、世界中を走り回っているからとペーパーを用意せずにアドリブで発表しましたが、とても明確な主張でわかりやすかった。もしペーパーがあれば入手したいと思います。