それに対して、米海軍は弁護士(軍人)を派遣して「航行の自由及び安全を主張する使用者として沿岸国の過大な要求に対してどう対応するかということが関心事である」と述べていました。
今回の会議には初めて米海軍が出席しましたが、イデオロギー抜きで自由に意見を交換できる貴重な場であることが、お互いにわかりましたので、今後建設的な形で問題解決の方向が見いだせるのではないかとの気運が高まりました。ですから、今回の会議の意義は非常に大きかった、また過去20年の会議の分岐点になる会議となったのではいかと思います。
扱われた問題は多岐に渡りましたが、個々のペーパーを参考にして、SEAPOLが後日プロシーディングを出しますので、それを合わせてまたご紹介したいと思います。過去の会議のプロシーディングも実に立派な物を作っておりますので、今回も読みごたえのある報告書が出るものと思います。
また、帰国後、われわれのプロジェクトに大内先生をお招きしてヒアリングと意見交換(12月下旬)をいたしますので、その報告も後ほどさせていただきたいと思います。
5:会議の出席者:アジアの国際海洋法マフィアのWHO'S WHO
なお、出席者についてあらためて触れますと、
1) 主催者タイからは元大使で同国の指導的な立場にあるピファ博士(SEAPOL所長)が全般をリードされました。日本の外務省でも講演されているようですが、海洋法ではタイでの第一人者です。
2) インドネシアのジャラール大使(Ambassador-at-large) も海洋法の国際的な権威であることはもちろんですが、外交官としてはかつてアメリカ大使までやられた非常に影響力のある方です。
3) フィリピンからはドミンゴ・シアゾン(Domingo Siazon)外務大臣が、キーノート・スピーチを行なったことは先に述べましたが、フィリピンがこの問題をいかに重要視しているか、また特にSEAPOLとの関係を、外務省がどれだけ支援しているかということを、参加各国にデモンストレーションしました。
4) カナダは、SEAPOLの発足当時から財政的支援をしてまいりました。1981年に設立後、最初の10年はIDRC(International Development Research Center)が、1992年からはCIDA(Canadian Institute of Development Agency)がSEAPOLを支えてきました。いずれもカナダ外務省の機関ですが、その中心となるダグラス・ジョンストン博士が今回の会議にも参加しました。海洋法の専門家ですが、カナダの対外政策での実力者で、カナダのトップに直接ものを言える立場の方です。ジョンストン博士はSEAPOLを財政的にも実質的な研究の上でも支援してきたということです。たとえば、カナダ人研究員1名をSEAPOLに常駐させ研究の支援に当たるとともに、今回の国際会議への財政的支援などをしております。