もうひとつは、われわれ自身の貢献ですが、これまでの学者法律家の会議に、戦略的思考を持ち込み、戦略的な発想を紹介することで、解決策への示唆を与えることができたのではないかということです。
主催者でありオーガナイザーのフランシス・ライ博士が、小川氏と私に夕食会でのスピーチの機会を与えてくれましたので、その機会を利用して、それぞれ20分程度という比較的長い時間、皆さんにわれわれの考えや、あるいは日本の立場を紹介する時間が得られ、非常に意義がありました。(それぞれのスピーチはSEAPOLのホームページに掲載されます)
これまでずっと参加してこられた大内教授からも、従来の日本の参加者とは全然違う、外に向かってものを言う代表が来てくれたということで非常に喜んでもらえました。大内教授は会議中、セッションの司会もなさっており、なかなかご自身の意見をいう時間もないというご様子でした。
3:インドネシアのとても上手な会議の利用法
今回の会議に、最大の群島水域国家インドネシア外務省は、自国の考える政策案をドラフトの段階でぶつけてきました。このインドネシアのアプローチ方法はとても評判がよかった。これからこういう政策を検討するが、政策立案過程で皆さんの意見を聞きたいという姿勢を示しました。外務省条約局の責任者がOHPでプレゼンテーションを行い、反応を窺いましたが、これは、まさにトラック2の会議のうまい使い方でして、会場からの反応に従って政策を修正する、あるいは反応がない場合はそのまま自国の法律として制定するというやり方です。
外務省条約局のBebeb AKN Djundjunan氏(Directorate of Treaties and Legal Affairs)が、国連海洋法条約に関する「インドネシアの見方」(“Innocent Passage Provision,A State Practice:Indonesian Perspective”)をプレゼンテーションした上で、“Draft Rules of the Indonesian Archipelagic Sea Lanes”という4頁のペーパーが配布しました。これには、proposed rule 1からproposed rule 19までの19の規則案が示されていました。
こういう会議を「インドネシアはこれまでもうまく利用している」ということを、フランシス・ライ博士も指摘していました。
新しいレジームやルールがアジアでもこのような形で形成されている訳ですから、こういう会議に積極的に参加し、相手の議論や考え方に対してしっかりした反論をしない限り、日本の意見が全く容れられないままインドネシア国内法として施行されて、あとで問題が発見されるということがあるということです。今回築き上げた人脈を通じて、皆さんと意見を交換し、今後とも建設的な関係を続けていくことは非常に大事になるだろうと思います。
4:アメリカの主張
アメリカ海軍は群島水域問題をどう見ているのか。プレゼンテーションによるとこれは「沿岸国のナショナル・アイデンティティあるいはプライドを守るための方便として使われてきた」と分析しておりました。