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米軍のPXや食堂跡を利用すれば、スーパーマーケットを作るのは簡単でしょうし、フリーポートの地域に指定することもできる。しかし、単に施設を作っても周辺にそれを必要とするデマンドがなければ、このような非常にうら淋しい結果になるということが良くわかりました。基地がなくなりますと、その途端に基地周辺の人達の所得もダウンする。施設は造ったけれども、買う人の能力が、それに追いつかないという状況が手にとるようにわかりました。基地周辺の街は人間の数だけが多い汚れた貧民街として残っておりました。

もし万一沖縄でそういう状況を考えますと、感情だけの基地撤去要求は経済的には地元に悲惨な結果を招くことがあるという点を忘れてはなりません。

 

2:クラークからスービックに至る道路交通の状況

 

クラーク・エアフィールドにはあまりよいホテルがないため、そのまま車で3時間かけてスービックに移動しました。クラークからスービックに至る道路は、舗装があまり良くありません。とくにクラーク基地周辺は火山灰をかぶっており一面荒りょうたる風景です。真っ暗で明かりが全くない。舗装が充分でないような道路を進むのですが、対向車の数はやたらと多い。ひっきりなしにオンボロの自家製の車みたいなものから、オートバイの脇に小さい幌をつけたお客を乗せるための車や、ライトもついていないような車が通る。けっこう数としては不思議なくらい多い。左右一車線づつですが、先に行く遅い車を抜いたり、対向車が追い抜きのためにこちらの車線にはみ出してくるので胆を冷やしました。3時間で4回ぐらい死んでいてもおかしくないような交通状況です。信号もほとんどない。あるべきところに信号がない。3時間走っても信号に出くわしたのは二、三ヶ所です。信号がない十字路を車が右左に横切る。その中にわれわれの車が突っ込んでいく。トラフィックのシステムが整備されていないのです。しかも道の周りに明かりもついていない。大使館で紹介してくれたドライバーでしたから運転には全幅の信頼を置けましたが、運転は対向車という相手もあることですから冷や汗が出ました。

ちょっと脱線しますが、行き交う車が、非常に多いというのは、マニラでもそうでした。多量の車が排気ガスをまき散らすものですから、環境的な面からも健康的とは言えないと思います。特にマニラ市内はひどいのですが、マニラの中心からちょっと離れた郊外でも同様の感じを受けました。特にボトルネックにあたるような地点がありまして、三車線が突然に一車線になったり、あるいは二車線しかないのに片側工事している。渋滞があちこちで起こっています。あるいは事故があると、もう延々と長蛇の渋滞が生じてしまう。どうしてこんな話をしたかと言えば、マニラ市内では日中車ではどこにも行けないということを言いたかったからです。目と鼻の先にある外務省や日本大使館からホテルまで2キロ程度の道に30分、40分かかる。これでは予定が立ちません。それで、最後の日の意見交換はわれわれがホテルに陣取って、外務省やフィリピン大学、国家安全保障局から尋ねて来ていただく段取りになったという次第です。

 

 

 

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