日本で海洋の安全保障の研究をしている人々とバレンシア博士との連絡調整を密にすることによって、お互いの足りないところを補充しあい、そこで本当の意味での世界に通用する「総合管理のための提言書」というものを作りあげていくことができるのではないかと思っております。したがって、バレンシア博士とのギブ・アンド・テイクの関係も必要ではないかと思います。
1.8.:海賊問題:海軍部隊にもある程度の貢献が...
小川 海賊についてですが、バレンシア博士は、CINCPACが海賊のことを自分達の仕事ではないと思っていると言っておりましたが、そのあたりはいかがでしょう。
秋元 これはバレンシア博士自身の考え方かどうかわかりません。米海軍の考えかたなのかも知れませんが、バレンシア博士は、太平洋艦隊が低次元の紛争に介入することをあまり好ましく思っていない。そういうことにかかずらっていてはもっと大事な使命を果たすことができないと実感しているし、体験しているところです。
事実、太平洋艦隊は海賊問題や漁業問題など低次元の紛争にはあまり介入したくないという姿勢をもっています。アメリカ海軍は、イギリス海軍と違って、警察的なコンスタビラリー・タスクは持っておりませんからね。アメリカでは、建国時からコンスタビラリー・タスクはコーストガードに与えられてきた。コーストガードが、海外でのアメリカの権益を守るための警察的活動もできるようになっております。
したがって、海外での海賊だとか漁業の警察的な行動は、沿岸警備隊がやるようになっています。とはいえ、これも建前的なことで、沿岸警備隊だけではとてもできないというのが実態です。というところから、いまアメリカでは海軍とコーストガードが警察的な活動に共同任務部隊をつくって対処するという事例が大西洋側、カリブ海で実施されています。
これについては、バレンシア博士も、関心をもっており、インドネシアやマラッカ海峡での海賊やシージャックの問題をどうやって解決するかにあたり、それならば、すでに展開している海軍部隊に、ある程度の貢献をさせてもいいのではないかという考えを持っております。ただ、それについては口頭での議論にとどまっており、論文等は、今のところないと思います。
1.9.:日本の役割に期待:オーシャン・ピース・キーピング
小川 バレンシア博士は、日本の役割をどのように思っているのでしょうか。特に海賊の問題についてどうでしょうか。
秋元 「軍事的なもの」と、それに較べるともっと低次元のいわば「警察的なもの」との境にあるような紛争がありますが、バレンシア博士は、海軍がその「境にあるような紛争」に対しても一定の貢献をしていく必要がこれからでてくるのではないかと見ています。