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バレンシア博士は日本海の管理の研究とあわせて東シナ海も研究しておりますので、これからますます大きな成果が出されるものと期待しております。

 

1.6.:閉鎖海の研究

 

小川 博士はドイツに留学したことがあると言っておりましたが、それと日本海の管理の問題とは何かリンクするものがあるんでしょうか。

秋元 博士はドイツで欧州の海洋問題、海洋管理の問題について研究した実績があるのですが、このときは特に地中海・黒海を一つの閉鎖海として捉え、それを安全保障問題も含めて、どのように管理していけばよいかを研究しております。最近博士は日本海の海洋管理の研究に着手しましたが、彼の発想では「日本海も地中海・黒海と同じように閉鎖海として捉えることができるのではないか」というのです。もし、そうだとすれば、地中海・黒海での先行研究がかなりアプライできるのではないか。

ちなみに、バレンシア博士は直接関与しておりませんが、その後、「地中海・黒海委員会」ができました。当初は「地中海・黒海サステイナブル・ディベロップメント委員会」といって、資源環境の保護についての委員会でした。それが、後に、資源・環境の問題は、当然陸岸からの海洋汚染、あるいは航行の自由、海峡の通過、海運活動にも影響を及ぼすというので、「サステイナブル・ディベロップメント」という限定形容詞を取り除いて、いまは総合的な地中海・黒海の管理を目指した「地中海・黒海委員会」になっております。この地中海・黒海での研究成果は、日本海、あるいは東シナ海、南シナ海を考えたときに、いいケーススタディになると思います。2

しかし、この「地中海・黒海委員会」と日本との間で交流をしている人はおりません。したがって、例えばバレンシア博士とこれから交流を続けていけば、そのあたりの資料も入手できる可能性があります。

 

1.7.:もともと安全保障からスタートした人

 

小川 その際、バレンシア博士の研究は安全保障も含んでいるのでしょうか。

秋元 バレンシア博士は、もともと安全保障からスタートした人ですが、東アジアには、ほとんど海軍力がないような国が多いので、資源・環境あるいは海運というものが大きなウェイトを占めております。しかし根底には安全保障の問題がいちばん大事だと思っておられます。したがって、そういう意味で、私などの研究とも連携をとっていきたいという意図があります。

 

2閉鎖海の議論については、この冊子の山内康英教授講義を参照。平成11(1999)年度「公海の自由航行に関する啓蒙普及事業」第1回(A)研究委員会 「日本の海洋環境モニタリングの現状と問題点」(講師:山内康英・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授)

 

 

 

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