1.3.:アメリカ海軍も一目置く研究実績
アメリカ海軍も、インドネシアの群島航路帯の通航権などの関係で、バレンシア博士の研究実績をかなり評価しているところがあります。とくに、太平洋艦隊司令部でに評価は高いですね。
これから海洋の問題はリージョナル化していく方向にあります。さらに、従来の安全保障・漁業・資源という縦割りの問題解決アプローチでは問題に歯が立たなくなってきています。その結果、総合的に解決を図っていく必要があるとの認識がひろがっています。たとえば、排他的経済水域での「航行の自由」と「資源・環境の保護」にどのようにしてトータルかつ最善の解決策を見出していくのかという問題がつきつけられており、現在、各地域ごとに、総合的な海域の管理の方向性が検討されていますが、このような流れは、もはやほとんど不可避的なものになっています。そういう状況下で、バレンシア博士の研究は、今後ますます脚光を浴びていくと思います。このような研究をしている人がもともと非常に少ないことからも、バレンシア博士との交流は今後も続けていく必要があるのではないかと思います。
アメリカ海軍も、今年の国防報告で、「アメリカが海洋法条約を批准していないために、安全保障上不利を被る事態も生じている」と書くようになりました。
いわゆる沿岸国が、資源・環境等の保護の関係で主張の内容を拡大していますが、アメリカ海軍は、海軍の行動の自由との関係に着目していることがわかります。
アメリカ海軍も、これからはバレンシア博士の研究を取り入れ、海軍自体でも研究していくのではないかと思われる兆候があります。したがって、広く資源・環境、海運、安全保障という広い分野で、バレンシア博士との交流を今後持っていくことが必要であり、期待されるところです。以上です。
1.4.:アメリカ側の発表資料のとりまとめ役
小川 アメリカ海軍が、バレンシア博士の研究に敬意を払っているとは?
秋元 例えば一昨年1998年に、ARFと一緒にインドネシアで海洋特別会議を開いておりますが、その中で、資源・環境と航行の自由の問題、それから海賊の問題等について話し合いが行なわれましたが、その時のアメリカ側の発表資料は、マーク・バレンシアがまとめたと聞いております。
1.5.:尖閣問題研究
小川 尖閣の問題についてはどうでしょうか。
秋元 尖閣の問題についても深く研究しております。バレンシア博士は、99年7月に日本のある大学の客員研究員として2ヶ月ほど滞在しましたが、防衛研究所にも招きまして、尖閣諸島の管理問題について研究発表してもらいました。
そのときも、バレンシア博士の方からは、「南沙諸島問題の反省と教訓も踏まえて、今後尖閣諸島にどう対処していく必要があるのかを考えるべきであろう。それには、まず一番大切な航行の自由を確保する。その上で、互いの国益を調整しながら解決を図っていかなければいけない」という建設的な意見の提示も得ております。