1.1.:海洋管理とアメリカ海軍の展開は両立する
マーク・バレンシア博士1は、ハワイのイースト・ウェスト・センターで主としてアジアとの外交の問題を担当する研究員ですが、海洋の問題に次第に興味を示し、ここ数年はずっと海洋の研究をしております。海洋については、アジア太平洋、特に東アジアの海洋の問題というと、どうしても安全保障以外の問題、資源、環境とか、国際海峡、群島水域での航行の問題、あるいは、島嶼の領有権の紛争に関わる問題などが主になってきております。そのような中でバレンシア博士は、海洋を適切に管理し、その中に安全保障の問題も含めて、同時にアメリカ海軍の展開、航行の自由の確保という問題も、その中で一挙に解決できるのではないかという考えを持っております。
バレンシア博士が最初に手がけたのは南シナ海の問題でした。南沙諸島問題について、南沙諸島の島嶼の領有権を主張する国々及び地域でこの問題をどのように処理すればよいのか。たとえば、共同管理というレジュームが作れないか。その共同管理のレジュームをつくる場合にはこういうことが必要ではないか。そのモデルケースとしてはこういうものが提唱できるのではないか、というところまで意見をまとめ、96年のCSCAPのMaritime Working Groupの会議で発表されております。
1.2.:CSCAP Maritime Working GroupやARFの常連
その後、バレンシア博士は、インドネシアの群島水域の問題や、中国とフィリピンの間の漁業問題なども手がけ、国際会議等で発表あるいは意見の提唱をしております。CSCAP Maritime Working GroupやARF(ASEAN Regional Forum)には頻繁に顔を出して、意見の発信に努めております。また、二年ほど前からですが、日本海の海洋管理についても研究を開始しており、竹島問題も含めた日本海の管理のあり方等について研究し、昨1999年の夏も二ヶ月ほど日本に来て、ペーパーをまとめて帰っております。このようなことから、東アジア諸国との研究交流をさかんに実施しています。特にこの17日の会合では、バレンシア博士の方から、東南アジア、ASEAN諸国については海洋管理について意見をまとめる糸口が見い出しつつあるけれど、中国式の独特な外交方針、外交姿勢というものが、海洋の共同管理というレジュームづくりで非常に阻害要因になっているという話がありました。
1Mark Valencia, Senior Fellow,Ocean Policy and International Relations, East-West Center. Phone:808-944-7247, Fax:808-944-7399. E-mail:VALENCIM@EWC.HAWAII.EDU