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それが、結果として、中国によるシーレーン破壊を招くことがあるかも知れないわけです。

そのあたりのところにまで考えが及ばない幕僚が作戦計画を練っているということに、わたしは危惧をいだきました。ただ、これは面と向かって言うべきことではないので言いませんでしたけれども。

曖昧性戦略がいいのか悪いのか、この話はここではいたしませんが、中台関係についてアメリカが現在取っているのはまさに曖昧性戦略です。それは、中国に対しても、台湾に対しても、どちら側にも牽制をかけるというものです。具体的には、台湾に対しては、「台湾関係法に基づいて介入します」とははっきりとは言わない。なぜかというと、はっきり言うと、台湾側が強気に出てしまい、中台関係をむしろ不安定なものにする恐れがあるというロッジックです。その反対に、「アメリカはこの問題に介入しませんよ」と言ってしまうと、今度は中国が強く出てきて、またまた中台関係が不安定になるので、これもまたはっきりとは言わない。曖昧戦略が正しいのかどうかは別にしても、アメリカは、台湾と中国に対して曖昧性を示しているのです。

問題は、アメリカが、自分たち自身や、自分たちの同盟国に対しても、曖昧なことを言っていることです。「自分たち自身や、自分たちの同盟国に対しては、絶対に曖昧性を示してはいけない」というのが、軍人として一番基本にかかわるところであるというのに、彼らはわれわれに対しても曖昧なことを言う。

同盟国から聞かれた時は、あいまいにしてはいけないのであって、「ケース・バイ・ケースで、こうこうこういう時には強い意志を示すんだ」と言ってもらいたいですね。

 

タンジーさんは「1996年の中台危機の時には、アメリカは空母機動部隊を2個出動させたではないか。あれは強い意志を示したものだ」と言ってましたが、結果としてはそうかもしれないが、目的、指揮系統は、曖昧であってはなりません。戦略には必要に応じて曖昧性を持たせてもいいが、目的、指揮系統は曖昧であってはなりません。そういう意味で、「太平洋艦隊は大丈夫か」という疑問も少し持ちました。

 

したがって、そういう意味からも、今回、こちらから出かけて行って、こちら側がむしろリーダーシップを発揮する形でいろいろ話をしてきたのはよかったのではないかと思います。今後は、二の矢、三の矢をどんどん放ち、「また日本から説教に来たか」というぐらい通って、意見を交換する必要があるのではないかなという気がいたしました。

 

16:「中国の現役将校ら現政権を批判」という記事

 

山本 その話に関連しますが、ここに2月12日の新聞の切り抜きがあります。香港の産経新聞の藤本欣也という記者が書いたもので「中国の現役将校ら現政権を批判」「台湾対応あまりに弱腰」というタイトルがついています。読み上げます。

「11日付の香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、北京の消息筋の話として、中国人民解放軍の退役将校ら元幹部がこのほど会議を招集し、江沢民国家主席の台湾問題への姿勢が『あまりにも弱腰だ』と批判した、と報じた。

 

 

 

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